Votoms

否定と肯定のVotomsのレビュー・感想・評価

否定と肯定(2016年製作の映画)
4.0
ロコヲスト否定論者デイヴイツド・アーヴイングと歴史學者のデボラ・リプスタツトが法廷鬪爭した事實を描いた作品。原題はDenial(拒絶)のであり、なぜ此やうな邦譯タイトルにしたのか些か不明ではある。

レイチエル・ワイズ演じるデボラ・リプスタツトは感情的に見えるやうに思へる場面もあるが、當時の状況、而して明らかに事實を歪曲してかかるアーヴイングに對して冷靜でいられるとは思へない。

彼女を辯護する辯護團はとても優秀であり、彼女が(實際に生存者から懇願されたといふ事實もあるが)怒りのあまりホロコヲストの生存者を證言臺に立たせやうとしたとき、アーヴイングがホロコヲストの生存者に對して侮辱的な態度で接する事をもつて説得したり、着實にアーヴイングを法廷で追い詰めていく。

此活動寫眞を觀ていて、私は日夲の歴史論爭における状況も想起した。私は歴史には夫ゝの視點があるといふ考へには贊成ではある。樣ゝな意見があつてよいと思ふ。併し、實際に起きた事を無理筋に解釋して否定する事は眞理に對する冒涜であるとも思ふ。而して、ある事件の被害者に對して罵詈雜言を浴びせかけるやうな態度は、最早人倫に悖る態度であるといふ他あるまい。さうした最低限度の道義を呼び覺ましてくれる作品である。
Votoms

Votoms