ルサチマ

「もののけ姫」はこうして生まれた。のルサチマのレビュー・感想・評価

4.3
高畑勲や近藤喜文という天才に挟まれた宮崎駿の姿を見てると天才にはなれなくとも、身の丈に合わない夢をいだければ凡人が狂人になることはできるんじゃないかと思えて、そのことにすごく精神を奮い立たせられる。同時に、このドキュメンタリーを見てると近藤喜文の姿と彼が亡くなって散り散りになるスタジオジブリの姿のコントラストに精神が引き裂かれそうになる。宮崎駿はきっと『耳をすませば』以降、近藤喜文の才能の大きさと自分の力量を照らし合わせて『もののけ姫』に向かったんじゃないかと思う。
勿論その後そこには高畑勲の深い影が加わり、そことも違う道をなんとか模索しようとした痕跡がはっきり見て取れるわけで、今は亡き巨大な才能たちを誰よりも近くで見ていた狂人・宮崎駿は、昨年青山真治もいなくなった現代日本でただ一人、本来映画が備えていた巨大な可能性と向かい続けているように感じられる。
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