木村優希

「もののけ姫」はこうして生まれた。の木村優希のレビュー・感想・評価

4.5
「命を吹き込む」

観る前は6時間40分という長尺(DVD3枚組)にビビってしまったんですが、観てみたらあっという間でとても面白かったです。

『もののけ姫』を映画館のリバイバル上映で観て改めて引き込まれて、勢いでディスクを購入。
ゼロからの制作過程に密着し、宮崎さんや鈴木さん、スタジオジブリの数々のセクションの仕事風景や音楽・主題歌作成、アフレコ風景を経て上映までを追いかけた、まさに長編スペクタクルドキュメンタリーでした。

【ディスク1】
スタジオジブリでの、主に絵コンテから動画、着色や撮影に至るまでの工程。
宮崎さんの手元をたくさん撮してくれるのでその勢いや作品への想いが線から伝わってくる。
背景や撮影技術裏側や技術、配色へのこだわりなどみどころたくさん。

【ディスク2】
引き続き絵や着色、撮影など。
平行して鈴木プロデューサーの宣伝への想いなどが宣伝会議の映像や東宝や電通のスタッフさんから伝わってくる。
そういった宣伝活動をしながらもまだラストまでできておらず、できていないどころか15分延ばすことになって大変なことになるところまで密着取材されていてこちらもハラハラしてしまう。
主題歌をどうするかについても監督も加わり一体感を持って取り組んでいて興味深い。

【ディスク3】
ついにアフレコ。
意外だったのが、大御所俳優もアニメーションのアフレコは初めて。という人が多かったこと。それでも宮崎さんのディレクションから着実にキャラクターに命が吹き込まれ、生き生きとしてくる様子を見られるのは貴重。なかなかアフレコ風景をこれだけ見られる映像もないと思うので興味深かったし知らない世界を覗けて嬉しかった。
当時は『ジュラシック・パーク2』や『スピード2』の公開と被ることで興行をとても心配されていたみたい。『もののけ姫』自体が今までのジブリと違う子どもも観られるものかといわれると、血の気が多いのでその点も懸念されていたよう。

【特典映像】
アメリカ公開での宮崎さんへの密着取材をまとめたもの。
『もののけ姫』もだけど、他のジブリ作品もアメリカでは人気とのことで、取材時間も膨大だったそうで。
今までのジブリとは違うジブリが海を越えて海外でどのように受け入れられるのか、宮崎さんのインタビューの言葉は、もしかしたらこの中で一番洗練されて語られているかもしれない。


全編通して見応えたっぷりでした。
欲を言えばスタジオジブリでの宮崎さんのやりとりに字幕を付けてほしかったのと、音楽を作る過程ももっと見たかったくらい。
アニメーションが出来上がるまで、途方もない時間と人と知識が関わっていて、そのどれもが欠かせなくて、まさに骨身を削って作られたもので、このドキュメンタリーを観ると、ジブリに限らずアニメーションを観る意識が変わると思います。買って良かったです。
木村優希

木村優希