わさび

ぼくたちのチームのわさびのレビュー・感想・評価

ぼくたちのチーム(2016年製作の映画)
4.5
マチズモが蔓延する、ラグビー命の寄宿学校に編入させられたひ弱な文系青年・ネッド。ルームメイトとなったのは、やはり転校生であるラグビーのスター選手・コナーだった。そんなかけ離れた世界に住む2人は、ひょんな事から親しい友人になるのだったが……。

非常に面白い映画だった。
ストーリー、役者、テンポ、本作が掲げるメッセージ、終盤の疾走感、エンディングの清涼感など、何処をとっても見事だった。

優れた青春映画であり、意義のあるLGBTQ映画でもある本作。メインキャラクターの2人は性的マイノリティであるが、敢えてそこだけに拘らず、問題を「自分を偽る事」というテーマに拡大して、普遍的な物語に仕立ててあるところも良い。
"人は皆、自分じゃない他の誰かになる必要はないし、特定の何かである必要もない"。大切なメッセージだと思う。

さて主にアンドリュー・スコット目当てに観たのだけれど、彼が演じる国語教師は良い先生だったものの、観ていて辛かったのは、彼が「大人になったら(状況は)良くなるよ」とコナーに言ってしまった事。否、そう言わざるを得なかった事だ。本人もそれを「Sad fact of life.」と言っていたが、大人になったら解決したり楽になったりする問題を、若い頃には只管悩んでいるしか道がないというのは、確かに悲しい事だ。それをどうにかする方法を教えてあげられない大人の存在というのもまた、悲しい。十代の若者には大人になるまでなんて待っていられないし、今すぐ状況を変えたいのだというのに。
でも、最後には若者達は自らの力で道を切り開き、そしてその姿をみて先生(大人)達も考えを改めていった。そこがまさに、青春映画としての清々しい瞬間だった。

なお本作で主演を張ったFionn O'Sheaさんが見せた類まれな煌きは、特筆しておきたい。今後もあの才能と輝きを活かし、アイルランド映画界の期待の若手の一人として、是非活躍していってほしい。
わさび

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