takanoひねもすのたり

シネマ歌舞伎 怪談 牡丹燈籠のtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

4.0
久しぶりのシネマ歌舞伎。

三遊亭円朝の『怪談 牡丹燈籠』とあってはとりあえず観に行って……おお!しかも片岡仁左衛門と玉三郎のコンビ!!
と知ったら観るしかねぇ!と何とか都合つけて観れました……。
(上映時間が偏るのでなかなか都合が難しいんですよね……シネマ歌舞伎、うちの地方の場合ですが)

多分、巷で認知の高い部分は、
美男の浪人・萩原新三郎と、侍・飯島平左衞門が娘のお露と侍女のお米が出会い、新三郎とお露は恋仲に。
しかしふたりはなかなか会うことが出来ず、お露は遂に焦がれ死に、侍女のお米も後を追う。

一方でお露が死んだと聞かされた新三郎だったが、ある夜にお露とお米が彼の目の前に現れる。再会を喜ぶ新三郎……しかしそれは死霊だった……。

というやつですが、実はこれはほんの前半。

後半は、百両で死霊を新三郎の元へ手引した伴蔵とお峰夫婦、飯島平左衞門を殺害した妾のお国とその密通相手の宮邊源次郎のその後の話に。

落語の怪談話ということで、原作者の円朝が高座で登場して『囃し』ます。

お露役の中村七之助さんの美しいこと。
仕草、表情が初々しく、かつあの世の雰囲気もふんわりと纏い冷えた美しさ。
お米役の二世中村 吉之丞さんの妖怪的な婆様振りが怖くも愉快。

眼目はやはり、片岡仁左衛門さんと坂東玉三郎さんの息の合った夫婦のやり取りの絶妙さ。
こずるいことを企む夫婦ですが、何処か憎めなくコミカルな感じで前半は進みますが、嫉妬と保身に走り夫婦仲にひび割れが入りだす後半の
との落差も見どころ。そして最後の惨劇も。

男も女も三者三様、そこには人情あり嫉妬あり愛欲がありエゴがあり。因果応報の報いあり。

『女は怖いかい?優しいかい?
……確かめてみるかい?』
これはお国の台詞ですが、いや怖いっす。

坂東玉三郎さんの小判を数える時の「ちゅうちゅうたこかいな」に思わず笑いが。
所作が本当に美しいひとですね……、抜いた襟のうなじの線のきれいさ。
差し出す腕や指先の動き、それる体のしなやかさ。

とても良い観劇体験でした。