豚肉丸

頭のない女の豚肉丸のレビュー・感想・評価

頭のない女(2008年製作の映画)
4.2
自分の不注意で「何か」を轢いてしまった女性が、人を轢き殺してしまったんじゃないかという不安に苛まれるお話

冒頭のシークエンスが素晴らしい。運転中に携帯電話が鳴り、それを取ろうと横を向いた瞬間に「何か」にぶつかる。明らかに何かに当たった感触はあったが、女性は恐怖からそれを確認することができずその場から逃げる。車の窓には、明らかに人間の手形らしい跡が残されている。
少し離れてから女性は車から降りて車のキズを確認する。すると、雨が降り始めて...
この一連の流れの掴みはバッチリで一気に惹き込まれた。『ザ・スクエア』でも同じような場面はあったが、何も触れられずに終わってしまった。しかし本作は、90分間ずっとその不安と後悔に苛まれ続ける物語となっている。

90分間ずっと劇的な展開は起こらないものの、着々と精神を蝕んでいくかのように不安な出来事が続くのが面白い。家族との団欒の場においても、何かを轢き殺してしまったんじゃないのかという罪悪感は常に付き纏う。
そして直接語られることは無いものの、セレブへの皮肉となっているのも面白い。
主人公の女性は一般的な労働者ではなく、金持ちに属する方の人間。この物語は結局、主人公のある決断によって終わるのだが、その決断はまさに金持ちだったからこその選択なんだろうな、と思わされるような終わり方でじわりと嫌な感覚が残る。特権階級だからこそと言うべきか。

本編も見終わった後も嫌な感覚が残り続ける。物語の構成上少し退屈な映画ではあるものの、確かにこの試みはなかなか面白かった。
豚肉丸

豚肉丸