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電気100%のこのレビュー・感想・評価

電気100%(2016年製作の映画)
4.1
最初見始めたときは「うわーなんか来たー!ばりばり実験やってますよアヴァンギャルドやってますよ的なノリー!」と思って辟易しかけたのですが、続けて観ているとなんだかいい気分に…。

場所の設定は銭湯の混浴で、男女2人が「あ、どもどもー」と言いながら一緒に湯に浸かり、女性側のこの前行ってきたタイ旅行の話を延々してる、というだけの内容。映像は実写として男女が混浴してるシーンはなく、アニメーションによって表現されている。タイでのお話も、写真やインスタグラムの画像、ちょこちょこ実写の映像が使われてなんだかエラい立体的。

音楽を担当している食品まつりさんのおとは強く印象に残っているわけではないが、エコーが響き渡る銭湯内での男女の会話(湯をかける音も入ってて、なんだかエロい)、旅先のタイの人々のガヤガヤ、風、匂いまで感じられて、あーなんか人の記憶って視覚だけじゃなくて聴覚とか嗅覚とか、色んな要素で構成されてるんだなーと感じた。いつまでも観ていられる気がする。グザヴィエ・ドランの『マミー/Mommy』で、ヘッドフォン付き上映というのがあったらしいけど、この映画でもやったら気持ちいいんじゃないと思った。リラクゼーション効果がありそう。

しかし、男女2人が混浴に「あ、どもどもー」と入って「ちょっとのぼせちゃったんでお先です。じゃまたー」という関係性って何なの?とは思いました。この2人の関係性そのものは映画の重要な要素ではないと思うので、それなら同性同士ならもっと世界に入り込めた気がする。また、オチはないので映画でするなら短編というフォーマットでなければもたないよな、とも思った。それを許容できるのはMOOSIC LABの懐の深さというかなんなのか…。

「ウルルン滞在記」「水曜どうでしょう」「ロケみつ」「旅猿」とか、色んな方法で旅先の映像を表現してきた番組があったけど、こういう旅番組があっていいんじゃないかなと思った。深夜枠で。これならダラダラお酒飲みながら観れる。いまやってる番組だと、NHKでやってる「世界一入りにくい居酒屋」が1番近い気がしました。
アニメーションのビジュアル感覚は、少し「あらびき団」的なごちゃごちゃ感を感じた。音楽と映像をかけあわせた表現として、映画以外の部分でいろいろ使えそうだなと思いました。
こ