MasaichiYaguchi

榎田貿易堂のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

榎田貿易堂(2017年製作の映画)
3.4
群馬県渋川市出身の飯塚健監督と主演の渋川清彦さんという同郷タッグで地元で撮影した本作は良い意味で肩の力が抜けていて、まったりとした気分で鑑賞出来る。
上京したものの夢破れてUターンして、“なんとなく勘で”リサイクルショップ「榎田貿易堂」をオープンした主人公の榎田洋二郎をはじめとして、アルバイトの人妻・真木千秋、落合清春、顔なじみの映画助監督だった荻原丈、終活中の志摩ヨーコ等、一癖も二癖もある面々が登場して、伊香保温泉が近くにある緑豊かな渋川市郊外で群像劇を繰り広げていく。
マイペースで生きているように見えるこれら登場人物達だが、彼ら一人一人は夫々悩みや問題を抱えていて、ある些細な“兆し”を切っ掛けにそれらが噴出し、やがて夫々の“転換点”になっていく。
描かれたこの群像劇は下ネタや脱力ギャグに彩られていて、やや取り散らかったような印象を与えるが、人生に山も谷もなくて丸く収まっている人がいないように、人には毀誉褒貶、でこぼこが付き物ではないかと思う。
ある意味、愛に執着して振り回され、人生が丸く収まらない主人公をはじめとした登場人物たちの葛藤や悩みを滲ませた再起への悪戦苦闘ぶりが笑いと共に繰り広げられ、本作に登場する伊香保温泉のように癒しと温もりを感じさせる。
悪戦苦闘の果てに出した主人公の決断、夫々の決意が描かれるラストが細やかな希望を残します。