北イタリアを舞台にした鮮烈な若さと瑞々しさに溢れた恋愛映画。語りすぎず飾りすぎない映像作りが心地よく、とても深い作品だった。
ジャケットの通り美しい男子二人が迷いながら恋に落ちるシンプルな物語だが、同性愛をテーマにした他の作品とは一線を画す強い何かがある。
例えば「ブリグズビー・ベア」に見られた異質な存在に対して否定や批判をしない理想的な共生のような、理知的でさりげない周囲の愛情が全体を包み込み、物語に優しい安心感を与えていた。
また、同性愛を特殊な人間の性癖ではなく、ただ他人を強く想うことの延長として素直に描いていたことも新鮮だった。仲の良い同性に対して限りなく恋愛に近い好意を抱くことは珍しいことではなく、おそらく多くの人がその感情を抑圧し、やり過ごすことで社会に適応している。本当は友情と愛情に明確な境界はなく、ただ目の前の相手が好きだという想いに性のタブーで無理な線引きをしているだけなのではないか？そんな疑問も抱いてしまった。
それにしても美しい映像と音楽の中でやたら目につく官能的なメタファーの多さ…。この世界であの距離で過ごしてたらそりゃこうならざるを得ないよな、と妙に納得させられる圧倒的なエロスの2時間だった。
