MayuShimada

君の名前で僕を呼んでのMayuShimadaのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0
この映画をテーマに3200字程度のレポートを書くぐらい余裕。
と思えるぐらい本当に好きな作品になった。

「なった」って書いたのにはちゃんと理由がありまして、これまで経験したことないくらい、四六時中この映画について考私えてたんですよ。考えてたというより気がついたら考えてしまっていた感じ。あのシーンのあの台詞、とか、あの町の雰囲気、とか、それぞれの登場人物の心情とか、頭の中で何度も再生して細かいところ思い出せないからもう一回見たい、ってなって、結局Blu-ray買ったよね。
噛み締めて噛み締めてこれ嫌いなとこないぞ?ってなっていった。

とにかく全てが刺さった。ストーリーも好きだけど、役者さんたちの細かい表情の演技とか、カメラで切り取られるイタリアの景色と空気感と、巧妙な台詞とシーンの組み立て方が本当に繊細で、丁寧につくられている感じ全てが好き。

エリオが自分の気持ちをすごく遠回しにオリヴァーに伝えるシーンが特に巧妙だなと思いました。その前の母親のエプタメロン朗読シーンが無かったら、あのシーンが「告白」しているシーンだとは受け取れなかったと思うんですよね。
全体的に多くは語らない脚本になっているけど、シーン同士の繋がりとか、舞台装置(このシーンだと戦争記念碑とその周囲の柵)も利用した登場人物の動作を全て含めると一つの意味が見えてくるようなつくり方をしていて、登場人物の心情を自然に読み取ることができる。
登場人物が「言わないこと」がひしひしと伝わってくる。

時代設定は80年代なので、エリオとオリヴァーが幸せな結末を迎える可能性は低いと最初から観客にはわかっている。だから別れのシーンが淡白でもすごく悲しい。むしろ淡白だから悲しい。
オリヴァーはいつもの「後で!」を言わない。「後で」が無いことを知っているから。
電話越しの再会でエリオと観客の期待が一瞬膨らむんだけど、やっぱりまた現実を叩きつけられて終わる。

二人で過ごせた時間は映画の尺的にもストーリーの時間経過的にも短いんですよね。映画の後半になってようやく二人の気持ちが通じるんですよ。だから観客の体感でもあっという間に別れのときが来る。
本当に夢のなかの出来事だったみたいに感じる。
最後の電話のシーンで念押しするようにもう一度エリオに別れを経験させるのも巧妙だなぁと思いました。

原作小説をぜひ英語のままで読んでみたい。たぶん読解めちゃくちゃ大変だろうけど、小説の空気感も味わいたい。
この映画に対する私の「好き」を塗り替えられる作品はなかなか出てこない予感がする。
MayuShimada

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