マヒロ

君の名前で僕を呼んでのマヒロのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.5
イタリアの避暑地で家族と過ごすエリオ(ティモシー・シャラメ)の元に、考古学者である父の助手としてオリヴァー(アーミー・ハマー)がやってくる。自信家なオリヴァーに最初は反感を抱くエリオだったが、やがて彼に惹かれつつある事に気付き、オリヴァーもまた同じ気持ちであることを知り、仲を深めていくが……というお話。

人気の少ない森が一面に広がるのどかで涼しげな避暑地という最高のロケーションの中で、ティモシー・シャラメとアーミー・ハマー(色々やらかして大叩かれしてたが今は何してるんだろう……)という稀代のハンサムボーイが愛を育むというシチュエーションが嫌味なくらい美しい。
舞台設定は80年代ということで、今より偏見のキツい時代の中で二人は隠れて関係を続ける事になるわけだが、元々手伝いに過ぎないオリヴァーはずっとエリオ一家と一緒にいられるわけではなく、夏の終わりと共に別れがやってくる事になる。物語上はここで終わらせても良いわけだが、秘められた関係が終わりを迎えた後にもうひと展開あるという構図が、脚本を担当しているジェームズ・アイボリーが監督した『日の名残り』と似ているように思えた。

雰囲気が抜群に良くて観ていて心地良い映画ではあるが、一方で気になるところもチラホラ。
まず、80年代という設定の割に時代感が全くないところに違和感を覚える。ティモシー・シャラメもアーミー・ハマーもシンプルに現代人のビジュアルをしているし、他の登場人物もしかりで現代劇に見えてくる。例えば『ブロークバック・マウンテン』なんかは80年代にはちゃんと相応しい服とかメイクをしていたし、そこら辺を再現しようとする気概が感じられなかった。
映画としての盛り上がりどころはエリオとオリヴァーが結ばれるところと、二人が離れ離れになった後のエリオと父の会話部分にあると思っているんでけど、そこに至るまでは正直冗長な場面も多くて、130分超のランタイムは少々過剰かなと感じた。

割と直接的なシーンもあったりするが、彫刻のように美しい二人のおかげで変に生々しくならないところが良くも悪くもという感じで、漂白されたような小綺麗さが映画として整って見える一方で物足りなさもあるのが何とも難しい。

(2023.1)
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