とても愛おしい映画。
5年前に見たら今と違う感覚を得るだろうし、5年後に見ても今と違う感じ方をするんだろうな。
その時その時の環境・年齢等によって感じ方が変わりそう。
設定がツルゲーネフの『初恋』ぽいけど両親(特に父親)が良い人だった版って感じ。
まだあどけなさが残るシャラメ青年のか弱くて繊細で何にでも染まってしまいそうな役がすごくマッチしている。
彼の一挙手一投足、表情がとても魅力的。
彼を撮るだけで美しい作品として成り立たせてしまうのだからすごい。
アイデンティティの確立期における性自認と2度と味わいたくない喪失感。
それを静かに優しく支える両親の無償の愛。
「二度と感じたくない感覚かも知れない。
しかし何も感じないこと、感情を
無視することはあまりにも惜しい。」
ラスト15分で父親が語りかける言葉のなんと美しいことか。
きっとエリオはこの言葉と両親のおかげで
この先何が起きても、自分の人生を強く生きることが出来るのだろうと思わせる。
間違いなく何度も見たい映画だが
"一夏の出来事"のように心にそっと、思い出としてしまっておきたい。