ゆかちん

君の名前で僕を呼んでのゆかちんのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.0
登場人物も景色も美しかったし、終わり方が切なくも美しい。
ティモシー・シャラメの美しさと儚さと機微の演技がいいな〜と。
単なる美形俳優ではないということを証明した作品になったのかな。
あと、あんな場所で夏とか冬を過ごせるの、羨ましすぎる…天国ですか?てなった笑。

映像の撮り方とか切り取り方とか、ぼかし方、色々と間合いを取った情緒を感じる美しい作品だなぁと思ってたら、監督はイタリア人なのですね。


1983年、夏。家族に連れられて北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)と出会う。
一緒に泳いだり、自転車で街を散策したり、本を読んだり音楽を聴いたりして過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な思いを抱くようになっていくーーー。


ティモシー・シャラメがひたすら美しい。
繊細で壊れそうな雰囲気が作品に合ってていい。
多くを語らずとも目線などの表情で暗に伝えるような演技。背中で語るもあったな。
良い俳優!このままアンニュイさを纏っていってほしい。
あの歩き方はあえてなのか?笑。


ただ、エリオがオリヴァーに惹かれた描写がもう少し欲しかったかなぁ。
確かに少しずつ気になりだしてる描写はあったけど、あれいつの間に?感を私は感じてしまった。
同性に惹かれるて特別な感じがするから、他とは違うものみたいな葛藤があるのかな〜と。
でも、よく考えたら、エリオはその辺フラットな両親に育てられてて(ゲイの友人カップルを家に招いたり、お互い惹かれているのを応援するかのような母の態度とか。)、彼にとっては何も特別なことでは無いのかもしれないね。
今作では、「同性に惹かれた」ことを殊更取り上げるというより、「初めて他人に恋をした」ということを強調したのかな。
マルシアとキスしたりイチャイチャしてたけど、それは彼女に恋してその行動を取っているのかというと、そういう描写はなかった。彼女自身のこと何も知らないんじゃないの?とすら思えるくらい。
男女間、同性間に関わらず、思春期の恋愛描写なのかな。お年頃だから欲望はあるし、嫌いでもないし、いい感じの相手がいればそういう行動したいなってなるのかも。
その辺の境目がエリオは分かってないというか。自覚があって遊びでやってたら女の子側からしたら腹立つけど、多分、自覚ないんだろうな。無理に女の子と付き合わなければみたいな感じもしてなかったし。「本当に好きな人」と「コイビト」の違いがわかってなかったエリオ。そのことがわかってたから、マルシアはエリオには「怒ってないよ、好きだよ」って言って、「ずっと友達だよね」って握手を求めた。いやー、マルシアええ子過ぎんか大人すぎんか。。
「大事なことがわかっていない」というエリオの言葉がよぎる。


一方、オリヴァーにとっては、同性愛というのは禁断で過ちのものだという意識があるよう。
彼はアメリカ人。1980年代アメリカでは同性愛は悪い立場に置かれていたのでは。
エリオと一晩過ごしたあと、「俺がどれだけ幸せかわかるか」と言ったり、最後の電話で、「俺の父親ならすぐ更生施設行きだ」というてたように、彼にとって同性を愛するというのは隠さなければいけないことなのかなと。
そういうわけで、最初、エリオに好意を示すものの、いざエリオから好意を告げられると断る。でもー、と。
むーん。
で、一夏、お互いに愛し合い幸せな時間を過ごした後、彼はアメリカに戻り、その後、女性と婚約する。
この彼の選択を責めることはできないよね〜。
彼が現実社会で生きるためには、そうするのも無理はない。愛に生きろなんて、他人からは簡単には言えないよね。
相手の女性からしたらなんか悲しいけど、隠し通すならいいのかなと。
そして、実際、そういう人は多くいるんだろうなって思うし。エリオの父ちゃんもその1人なのかな。

ただ、なんとなく2年続いた相手と結婚というてたけど、これはいつからなんだろ?
エリオと別れた後、2年経過してたなら、エリオと別れ、エリオのことを忘れられないけど、前に進むためにその時出逢った女性と2年続いた場合は、なんかわかる気がする。
でも、エリオと出逢う前からその女性と付き合ってたというなら、「は?」てなるかも笑。それ浮気ですやんって。エリオだけでなく、ダンスした女の子とキスしてたし、それアメリカの彼女にしたら怒りじゃね?と。
前者であることを願う笑。

ギリシャ神話とか彫刻の考古学ってのが後半で効いてくる。

アーミー・ハマー、こんな役も出来るんすね。自身満々のイケメンだったけど、途中、エリオの態度変わったときは乙女の顔してたし。

エリオの両親が素晴らしかった。
だから、オリヴァーの婚約を聞いて、喜んで電話口で祝ったあと、お互いなんとも言えない顔をして見つめ合った両親の演技がとてもよかった。
エリオの恋を応援する母も、本当は自分も男性に恋したことはあったけど、そういう関係には進まずにきたことをカミングアウトしてエリオを励ます父。
悲しい気持ちを押し殺して無かったことにはせず、しっかりと悲しみ、そして、良い思い出も含めてしっかりと残すんだよ、て。
こんな親に育てられたら、自由に生きられるし、道を外れることもないだろうな。
母は知らないって言ってたけど、気づいてたりしないのかな〜。

最後のエンドロールが、ティモシー・シャラメか暖炉の前で家族に顔を見られないように静かに涙を流すのをずっと流してるのがとても良かった!この作品の完璧なエンディングだなと感心。
声をかけられて、ふっと顔をうずめながら振り返るので終わるのが素晴らしい余韻を生み出していた。

同性愛の葛藤などの問題はあまり盛り込まず、「一夏のかけがえのない恋」に焦点を当てた作品。

調べると、今回の作品は、原作の小説の半分くらいらしい。続編を作る気でこういう仕上げ方にしたらしい。確かに、エイズとかの問題まるでなかったしね。
でも、アーミー・ハマーがあんなことになったから難しいのかな。シャラメっちも大スターになってもたし。

そういえば、服装も気になったな。なんだあのTシャツ、みたいな笑。

それにしても、あの北イタリアの街やロケーション最高だったなぁ。
あんなところでの経験て、夢が幻かみたいになりそうや。

切なくて悲しいけど、その反動で圧倒的にキラキラした夏のように見えた。
それだけ夢中に誰かを愛せるのは羨ましいことだな。
「君の名前で僕を呼んで」て、究極の一体化なのかな。
見終わってタイトルを見ると、なんだか切ない余韻になりました。
ゆかちん

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