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君の名前で僕を呼んでのKHのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
3.5
80年代の片田舎のイタリア(避暑地)の街並みや空気感が映像を観ながら伝わってきた。
行ったことないはずなのに郷愁を誘うような美しい映像だった。
それに加えてタイトル「君の名前で僕を呼んで」自体もそうなのだが、全体を通して官能的な空気感が漂っておりこの2つがマッチしていて凄い映画だなと感じた。
80年代のイタリアで今みたいにジェンダーを公表する選択肢がないからこその、息苦しさと2人だけの秘密はこの舞台(イタリアの片田舎の避暑地)を表しているような感じがした。
序盤の色白の痩せ型でザ文系っぽい主人公エリオが自分に持ち合わせていない、マッチョで小麦色の肌でダンディ(男らしさ)なオリヴァーに惹かれるシーンは、個人的に三島由紀夫の「仮面の告白」の冒頭の官能的な場面を思い起こさせる。
オリヴァーに夜を誘われて有頂天になったエリオが、急に愛おしくなったのかマルシオと行為に至るシーンも、
エリオの桃のシーンも共感はできるけど、こんなにエグいシーンを描きつつ映像がグロディスクにならないのは凄い。
ただテーマが最初から最後まで終始恋愛だったので個人的に余り好みではなかった。
あとヨーロッパ人が好きそうな、高校の授業で出てきたような哲学人や神話など様々引用(クライマックスの父子の会話を含め)されていて、確かに詩的で良いかもしれないが、正直言って実質的な言葉として映画に馴染んでないなと思った。
内容や演出や心情の考察と違って、知識にのみ頼った伏線は、映画から選別されている気がして素直に楽しめなかった。映画なら最後も映像で語って欲しい。
そうだとしてもやっぱり映画全体のノスタルジックでかつ官能的な映像でありつつ、グロテスクにならない映像には感動したし、ずっと心に残っている。
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