ocho

君の名前で僕を呼んでのochoのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

"Call me by your name"
見た者が、同じ感情を共有する魔法の言葉にもなりそうなほど、強く美しいシーン。

場所、季節、風、空気、音、会話、主人公たち
どれをとっても美しく、まるで恋に落ちたように、数日頭から離れない映画。
自然の描き方が素晴らしく、夏の音、光、乾いた空気が淡い思い出のように描かれ、北イタリアの夏の世界観に引き込まれる。
坂本龍一のBGMはかわいらしく、
飛び跳ねるようなこころ、気持ちが変わっていく様を示しているよう。

今では理解が広がってきた男同士の恋愛。
"甘酸っぱい"だけでは語りきれない切ないひと夏の恋は、1983年という時代を考えるとよりセンチメンタルなものになります。

主人公エリオの父親は大学教授で、毎夏学生を別荘に受け入れ、家族ぐるみで一緒に過ごすのが通例。
その雰囲気ももう素敵なのですが、今年の学生は自信家でハンサムなオリヴァー。

最初は、そんなオリヴァーに反発していたエリオですが、一緒に過ごすうちに、父の補佐として信頼を得ているオリヴァーに対する嫉妬のような、好意のような、不思議な感情を持ち始めます。まさに近づいたり離れたり。
そのうちオリヴァーはエリオの感情を揺さぶる存在に…

ハンサムで高身長で知的で、ちょっと横柄で。
同じように知的ではありながらも、感情に振り回されている17歳のエリオからしたらとても大人に見えたのかもしれません。でもその瑞々しさと自信なさげな儚さが尊くもあり眩しい。
シャラメくんが持っている元々の魅力が、この役をより引き立てていて、所作ひとつひとつがとてもよい。

一方オリヴァーは最初からエリオのことが気になっていて、合図を出していたのに、と。
時代背景も相まって、大っぴらにすることができなかったからこそのすれ違い。そしてそれを埋めるかのように愛し合うふたり。
刻々と近づく別れのとき。

そして、この物語に欠かせないのが、聡明でとても理解のある深い愛を持った両親。彼らの紡ぐ言葉やエリオに伝えようとする教えが素晴らしく、感動的。こんな素敵な言葉をかけられる親、いるのだろうか…羨ましい。

ひたすら悲しく、苦しいだろう。
痛みを葬るな。
感じた喜びも忘れずに。

生きるとは何か、考えさせられます。

気だるく淫靡な夏の午後。
煌めく水面。
風を感じる草むらでのキス。
繰り返されるbecause I want you to know.

美しい景色とバカンスへの憧憬。
センシティブでまっすぐな恋への渇望。
エリオへの感情移入。
いろんな感情がないまぜになり、苦しくなりながらも、それらが全て美しく、何度も思い出しまう不思議な作品。
ocho

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