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君の名前で僕を呼んでのjyoのネタバレレビュー・内容・結末

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

『君の名前で僕を呼んで』、このタイトルが興味を持つし、『キャロル』や『ムーンライト』が評価され、市民権を得つつあるLGBT映画である事も気になっている要素である。

物語は1983年のイタリア、17歳の少年のエリオは大学生のオリヴァーと出会い、そして恋に落ちていく・・・。この映画は彫刻の写真のタイトルバックから始まっていく。この大量の彫刻の写真をみせられると恐らくこの映画は知的であり、難しい会話が多い展開になるだろうと思った。実際、この映画はそうである。食事をするときの会話は、政治の会話、哲学的な会話、筆者がこの会話に加わる事は到底無理だろう。ルキノ・ヴィスコンティの『家族の肖像』のようだ。オリヴァーは、まるで『家族の肖像』に登場するヘルムート・バーガー演じるコンラッドのようで男性でありながら、どこか女性的な魅力のあるそれこそインターセックスのような男性である。おそらくシスジェンダーが観ても惚れてしまいそうである。

また、大変高度な映画であり、ディテールに注目すると、さらに楽しくなる。

ここからは、ネタバレになるので、未見の人は注意してほしいのだが、ポスターにもあるように青に注目をしてほしい。序盤、エリオとオリヴァーが自転車を載っていると青い服を着た胸を大きい女性が胸を揺らせながら歩いている。次の場面では背景がぼやけていて非常に分かりにくいが、おそらくヘテロセクシャルのカップルがイチャついている。この時の片っ方は青い服を着ている。この映画における青は自分はヘテロである事を伝えているように感じた。欧米では青とはエロティシズムの象徴である。実際ポルノ映画の事を「ブルーフィルム」と言ったりもする。青が出てくると、同性愛を拒否するかのように記号として描かれている。実はエリオにはマルシアという美しい女性の彼女がいる。彼女と初デートをするとき、エリオは青いジャケットで身を包んでいる。しかも、青い服の中からみえるのはピンクの服だ。ピンクは同性愛の象徴だ。自分の性癖をマルシアに隠しているという事になる。青に注目すると、ポスターの青空の意味が分かってしまい、ポスター自体がこの映画のラストのネタバレを完全に行っているのだ。しかも、それは映画を観ないと絶対に分からない事である。

『キャロル』も『アデル、ブルーは熱い色』も『ムーンライト』も大変知的な映画であり、LGBT映画を製作するには非常に高度で1度観ただけでは分からない内容にすると、LGBTに対しての理解が深まって行くことだろう。

『君の名前で僕を呼んで』を観た後、ちょっとした疲れがおきてしまったが、映像が大変美しかったし、またパズルみたいにいろいろな要素を集めていき、それを繋げていくといった見方をするとどのような人間でも楽しめる映画であると思う。

しかし、壁に書かれた「1981」の文字だけが気になって仕方ない・・・。
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