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君の名前で僕を呼んでのせのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.5
1983年の北イタリアの美しい夏を満喫できるそんな映画でした。
毎日読書して、泳ぎに行って、音楽聴いて…
なんて幸せな一夏でしょうか。めちゃくちゃ羨ましいです。

眩しい陽光、深緑の草木、水浴。夏虫の声。
ワイドアップハンドルのクラシックバイクやFIATたちは砂利道や石畳の上を走る。街には、教会の鐘の音が鳴り響く。

家には、大きく柔らかいソファ。ピアノの旋律。
エスプレッソと煙草の煙。
庭には立派な食卓。その上を飛び交う英語、フランス語、イタリア語。賑やかな団欒がそこにある。

-17歳と24才の青年の、初めての、そして生涯忘れられない恋の痛みと喜びを描くまばゆい傑作-

本当にコピーがぴったりと板についている。言ってしまえばそれ以上でもそれ以下でもないストーリー展開です。
しかし、登場人物たちの会話はものすごく印象深く、台詞や演技は素晴らしいものでした。

この作品が気に入らない方がいるとするなら、耽美とユーモアの共存を受け入れられなかったということではないでしょうか。。この点は難しい。

もう一点、作中における「世紀の大発見」について、個人的に触れなければならない気がする、、、
何の変哲も無いもぎたての「桃」という自然界の"アレ" を作り出す、そのクリエイティビティとDIY精神には目を見張るものがあります。
彼こそが造物主。
何を隠そう彼こそヘレニズム時代の彫刻家プラクシテレスの転生者でございます。(前半のプラクシテレスの話は全てこれの伏線)
たとえもしそれが偶然だとしても、リンゴが木から落ちるのを見て重力の存在を発見したように、桃の曲線的な輪郭と割れ目を見て…ですからね。つまりは、ニュートンと肩を並べる「世紀の大発見」ということで間違いありません。

ニュートンいや、多感なエリオを演じたティモシーさんお疲れ様でした。

観てるこちらが桃農家の人に謝りたくなるそんな映画は初めて。
彼らの思い出が永遠のものであるように、映画の名場面の一つとして、これからも人々の記憶から消えることはないでしょう…
せ