フェミ研ゼミ

君の名前で僕を呼んでのフェミ研ゼミのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
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何度かレンタルしたのだが、
プレイヤーにディスクを入れるパワーが足りず、そのまま返却してしまったり、
再生まで試みるがいつか観た「オルエットの方へ」の様な長く続く真夏の空気を察知してしまい、外気がこんなに暑い中で観ていられるか。
と心が夏バテ状態でしばらく観られなかった。

最近やっと涼しくなって、突然「call me by your name」を観たくなった。
なぜか英語で頭に浮かんだ。
青空にレモン色の文字のあのポスターが浮かんた。

TSUTAYAに行ったら私の中ではまだまだ新作のつもりだったが、
旧作の棚に移されていた。



これまで何がそんなに苦痛だったのかと思うほど
気持ち軽やかに(そもそもディスク自体軽いのだが)ディスクを取りプレイヤーに挿入できた。映画がはじまっても前のような拒否反応はなく、
秋の空気に中で観る夏の景色はなんて気持ちいんだろうと思った。

何度も一時停止をしてしまった。
エリオとオリヴァーの二人の服装をメモしておきたかった。
ぐっとくる色味とファッションの二人のツーショットに視界がときめいた。

画面のこちら側の私は、
苦しかった夏がやっと過去り、やっと訪れた秋に心躍っていたじゃないか。と思いつつ画面の中の夏にすっかり恋していた。
「call me by your name」「君の名前で僕を呼んで」ってなんだよ。
英語が日本語になると途端にロマンスの欠片もなくなるはずなのに
どっちにしたってめちゃくちゃいいな。ビール飲んでたらほろ酔いで涙ながしてなあと。それくらい酔いしれてしまった。
こんな表現なにも表現できてないくせに全部伝わっちゃう気がするし。なんかずるい。
私の心の受け皿、満たされすぎて何かこぼれてしまった。
涙が、とはいいたくない。
とても幸福だし、泣ける映画というと途端になんかウザくなりそうで。

「君の名前で僕を呼んで」 何度も頭の中で言いたくなる。口に出すと恥ずかしいけど。頭の中でならいいでしょう。
二人の恋はとても普通で特別だった。普通だけど特別だった。
エリオとオリヴァーのふたりの恋は「ひと夏の恋」と片付けていいのだろうか。
二人の一生を観たような気持ちになった。
エリオのお父さんの話を聞いたからか、二人がこれからどうなろうが
遥か先の未来までが見えたような気がした。

私は季節めぐった冬の画面の中で鼻水垂らして泣いていた。
暖炉の前でオリヴァーからのさっきの電話を思い出して泣いていた。
今が冬で良かった。寒くて寒くて。自分の体の輪郭がくっきりしてちょうどいい。
この悲しさ寂しさは自分の体の中にあるんだと思うとなんかこの体を大切にできそうな気がするから。

悲しいのに、耳は熱くて。”君の名前で僕を呼んでくれる”オリヴァーの声が耳に一生張り付いているみたいだった。

たくさんたくさん鼻水と涙は出るし、悲しいんだけど、
オリヴァーのことを自分と同じように知ってくれている
父さんと母さんがいてくれてよかった、と安心した。

今は多分とても悲しい。
未来のオリヴァーのことを想像した。

今の気持ちをきちんと整理して好きな時に取り出せる引出しにいれられたら、
そんな風に大人になれたら、またオリヴァーに会えそうな気がした。
それで今はいい。
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