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君の名前で僕を呼んでのaiiiiiのレビュー・感想・評価

君の名前で僕を呼んで(2017年製作の映画)
4.8
なんて美しさに溢れた作品なのでしょう。
夏の光の中で織り成され静かに進む物語と音楽と、そこで生まれていく感情の抑揚が詩を読んでいるかのように美しい。

タイトルがまた美しくかつ、せつなくて泣けます。行き場を探している溢れてしまった愛の居場所が作られたようなタイトルで、深いけれども単純なんだよと言われているように感じました。

人を愛して触れたくて近づきたくてひとつになりそれでも溢れてしまう想いを、それぞれの中に存在を置いて呼び合っていたのでしょうか。オリヴァが最後に選んだ道とはまた違う、もしかしたらそこでは得られないのかもしれない、2人だけの秘密の愛言葉のような深い絆を感じました。

彼女を求める性的な欲求、彼を求める存在の欲求。その辺の繊細な描かれ方にまた、どちらにも胸がキュンとしてしまいます。アプリコットのように甘酸っぱくてエロティック。


若さがゆえの衝動や戸惑いと、そこから成熟してゆく心と体の無限性を持ち合わせた、燻る感情までもがとても美しい詩のような作品でした。

個人的にオリヴァが最初はあんまりよく見えないように感じるのですが、エリオが彼を受け入れる自分の感情への抵抗のようにも思えて、また最後の方に近づくにつれてよくお顔含めて見えてくるのもまた良かったです。みんなの人気者オリヴァからエリオの見ているオリヴァになっていくような、自分もエリオになってしまうような、そんな感覚でした。

彫刻が映し出されてゆく冒頭と音楽に、この作品のメッセージが映されているようでまた素晴らしいです。若き日に刻まれた物が、時を追って重厚でありながら、時と存在の全てを含み美しく有る。

お父さんとの時間も最高でしたね。愛情という言葉を超えた友情でもないそれ以上の絆なのか、それを経験出来ない事が悔しく羨ましく感じる程でした。恥じることも隠すこともないと思いながらも、現社会でのこの関係の存在が微妙なラインでとても絶妙に描かれているなと思いました。

最後の鬼のような長回しにはびっくりしましたが.笑、感情の全てが表現されているようて魅せられますね、感無量でした。
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