けーはち

ファイナル・マスターのけーはちのレビュー・感想・評価

ファイナル・マスター(2015年製作の映画)
3.6
詠春拳師範が立身出世のため広東から武術の都・天津に。現地で結婚し弟子を取り、その弟子が道場を九つ破れれば詠春拳の道場を開ける。だが、その約束も軍閥に押され──徐浩峰監督の前作『ソード・アーチャー』同様、画面の見映えを重視、話は行間がガッポリ空いて変動の時代による混沌も相まって説明不足感が強いが、結局カンフー映画であるから細かい話はワカラずとも良い。西洋列強に侵食される清朝末期時代の退廃的な雰囲気、ワイヤージャンプなどハデな軽業要素のない聴勁・化勁で倒し必要最小限を滑らかに撫でるかのように斬る(実際はほぼ寸止め)八斬刀の功夫の快に酔うが吉。特にクライマックスは詠春拳の真価を発揮する隘路での近接武闘が素晴らしい。結局は師父が武術界と対立して逃げ帰るだけの話に収まるが、時代に伴う武侠の衰廃と、それに翻弄された師父自身も含め巻き込まれた弟子や妻の悲哀も満載。水墨画のような灰色に近い画面に静かな滅びの美を感じさせる。