MasaichiYaguchi

リングサイド・ストーリーのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

リングサイド・ストーリー(2017年製作の映画)
3.5
映画「百円の恋」の武正晴監督が、4年振りの映画主演作となる佐藤江梨子さんと、映画、テレビドラマと出演作が相次ぐ瑛太さんのW主演で描く本作には格闘技愛が溢れている。
それを表すように、本作に実名で登場するプロレス団体「WRESTLE-1」の武藤敬司さんや黒潮“イケメン”二郎さん、その他K-1ファイターの武尊さん等、格闘技界のトップアスリートたちが出演している。
物語は、カンヌ映画祭に行けるような一流俳優になるという「夢」を追い掛けているが、実態が伴わないダメ男、村上ヒデキと、このヒモ同然の男を健気に支える同棲相手の江ノ島カナコという一組の男女を中心に展開していく。
カナコは今まで勤めていたところを突然クビになって生活が破綻寸前、たまたま人員募集していたプロレス団体にヒデキのアシストもあって採用されることになる。
初めはプロレスという未知で男臭い世界に馴染めず、困惑していたカナコだったが、その世界で戦う男たちの熱さや、試合の醍醐味に魅了されていく。
プロレスラーを題材にした映画というと、「ナチョ・リブレ 覆面の神様」「レスラー」「お父さんのバックドロップ」「いかレスラー」等、バラエティーに富んだ作品があるが、本作は「リングサイド・ストーリー」というタイトルにあるように、誇張に演出することなくプロレス興行の舞台裏をリアルに描いている。
「百円の恋」もそうだが、武正晴監督は社会的にダメ人間を格闘技を通して奮起させていくが、夢ばかり追って頭でっかちなヒデオもある切っ掛けでリングに立たせていく。
売れない俳優であるヒデオとプロレス業界で働くカナコを主人公にしていることもあり、ストーリー展開の中で映画「ロッキー」へのオマージュや、過去の有名プロレスラーへのレスペクトが様々な形で登場したりして、格闘技ファンには堪らないと思う。
ヒデオの愚かな行動で終盤ロープ際に追い詰められた2人は、どのようにこのピンチに立ち向かっていくのか。
優しさと希望が感じられるラストや格闘技愛に溢れたエンドロールが爽やかな興奮を残します。