木蘭

紅い唇/血に濡れた肉唇の木蘭のレビュー・感想・評価

紅い唇/血に濡れた肉唇(1975年製作の映画)
3.4
 エロと美少女吸血鬼を描き続けたユーロトラッシュ映画界の雄ジャン・ローランの最高傑作にして、アニー・ベルのデビュー作・・・とされる本作、話の筋も分かるし眠くならくて観やすい!
 まぁ、ローラン作品を見慣れただけかも知れないが。

 偶然に見かけた写真から蘇った記憶・・・古城とそこで出会った少女との出会い・・・を追い求める青年の周りで起こる謎の殺人、そしてあの時と変わらぬ少女の幻、復活し彷徨う少女吸血鬼たち・・・
という幻想的でエロティックな物語を、ローランならではの美意識溢れる映像と気怠く悲壮感漂う空気感の中で描き出される。

 いつもは美しい裸体と印象的な景色で誤魔化されているが・・・エキストラの数や、パリのメトロや映画館といったロケの多彩さ、抑え気味の濡れ場など、制作陣のちゃんと映画を作るよ!という気概が感じられる。
 墓場で殺される墓守の役で監督自身も出演してしまうなど、やる気が感じられる。

 きっとこれは、バタイユから教わったシュールリアリズムや、アラン・ロブ=グリエの影響を受けたヌーヴォ・ロマンなんだ・・・と自分を誤魔化す必要も無く、話の筋も分かるし、突拍子もない台詞や展開も無い。
 勿論、ゆる~いシーンもあるんだけどね。

 きっとローランをキチンと支えてくれる(コントロールもしてくれる)プロデューサーがいれば、ユーロトラッシュ界の雄だなんて言われない作品を作ってたんじゃないかな・・・という才能を感じた。
 それもこれも、この夜に見た幻想かも知れないけど・・・。
木蘭

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