Cineman

レザボア・ドッグスのCinemanのレビュー・感想・評価

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)
4.9
『レザボア・ドッグス』
クエンティン・タランティーノ監督
1991年公開アメリカ
鑑賞日:2023年2月6日

【Story】
黒いスーツに白いシャツ、黒のネクタイに身を包んだ6人の男と、リーダーらしき年輩の男とその息子がダイナーで朝食を取りながら無駄話をしている。
マドンナの大ヒット曲「ライク・ア・ヴァージン」の歌詞の解釈についてだ。

〜ライク・ア・ヴァージン」は巨根好きな女の歌だ。巨根について歌ってるんだ〜

〜それは違う。繊細な少女の歌だろ。何度かヤッタ後に優しい男と優しい男と出会い・・・〜

〜やめろ、バカなことを言うな少女が優しい男と出会う歌じゃない・・・〜

〜どこまで話たっけ〜

〜「トゥルー・ブルー」が少女と男が出会う歌で「ライク・ア・ヴァージン」は巨根の歌・・・〜

〜「ライク・ア・ヴァージン」の歌の意味を教えてやる。昼夜問わず男と寝まくるヤリマンの話で〜

〜何発ヤッたんだ?

(その後マドンナの歌についての議論が続き、店を出る時のチップの払い方についての話がある)

そんなぐだぐだした世間話を終えた6人がダイナーを出る。

ラジオからDJの静かな声がかぶさる。

〜パートリッジ・ファミリーの「悲しき青春」に続いてエジソン・ライトハウスをお届けしました。
K・ビリーの“スーパーサウンド70’ まだまだ続きます。

(BGMがジョージ・ベイカー・セレクションの「リトル・グリーン・バッグ」に変わり店を出た6人が通りを歩くショットにかぶさり出演者の紹介)

彼らは宝石強盗に向かう。

(次のシーン)
車の後部座席で血まみれになったメンバーの一人を励ましながら運転する男。


宝石強盗が失敗に終わった彼らはそれぞれ待ち合わせ場所の倉庫に集まる。
なんで警官隊があんなに早く駆けつけたのか。
この中に裏切り者がいるとしか考えられない。
誰が裏切り者なんだ。
お互いを牽制しあいながら犯人探しが始まるが・・・


【Trivia & Topics】
*初対面の6人は名前ではなく色で呼び合う。

*「ライク・ア・ヴァージン」をヤリマンの歌だと言いはったのはブラウン(タランティーノ)の解釈についてマドンナからダメだしを出された。

*タイトル・エンド
タイトルが終わったと同時に宝石泥棒が失敗に終わったシーンになる展開には唸ります。
そしてメンバーが集まった倉庫で裏切り者が誰かの口論だけで約2時間観客を飽きさせないタランティーノの演出は見事です。

*あの名曲が。
6人の機関銃のような口論の合間にラジオ番組から流れる70年代の名曲の数々。ジョージ・ベイカーの『Little Green Bag』、ジョー・テックスの「I Gotcha」、スティーラーズ・ホイールの『Stuck In The Middle With You』、ハリー・ニルソンの『Coconut』に至るまで当時代を生きた洋楽ファンにとっては涙・涙の選曲が見事に画面のテンポにハマっています。

*タラちゃんの日本映画愛。
今ではタラちゃんの愛称で親しまれているタランティーノ監督。
マンハッタン・ビーチのレンタル・ビデオ屋でアルバイトしていたお兄ちゃんだけあって映画愛が半端じゃない。特に日本映画愛。
増村保造、石井輝男、石井聰亙、石井隆、三隅研次、鈴木清順、本多猪四郎、三池崇史、塚本晋也、深作欣二、北野武が大好だと公言する監督は世界広しと言えど他には見当たらない。
特に北野武監督とは相思相愛。
北野監督のデビュー作『その男、凶暴につき』(1989)を観たタラちゃんが狂喜したのが目に見えるようだ。
『レザボア・ドッグス』は深作欣二の『仁義なき戦い』の影響が濃いと言われているが、来日時の舞台挨拶の条件の一つが梶芽衣子と会う時間を設けることだった。

*ハーヴェイ・カイテルのおかげ。
出演をOKしたのみならず、他のキャストを選ぶためのオーディション会場費や会場に行くための旅費まで負担してくれたおかげでティム・ロス、マイケル・マドセン、スティーヴ・ブシェミといった無名に近かったが、力を持った俳優陣の出演が決まった。
ハーヴェイ・カイテルは共同制作者としてクレジットされている。

*助っ人登場。
タラちゃん映画の特徴の一つがだらだら長回し。
製作者たちからはもっと短くしろとプレッシャーがかかるが『未来世紀ブラジル』(1985)の監督テリー・ギリアムが「自分を信じろ」とタラちゃんにエールを送った。

*タラちゃんの狙い
宝石強盗の話にもかかわら犯行の様子を描かず地味な倉庫の中の話し合いで展開していくうちにメンバーが強盗団に加わった経緯や犯行後の逃走劇など、過去の出来事が織り交ぜられていく構成である。裏切り者の正体も、その中で明かされる。
タラちゃんは時間の流れを観客に見せたい順番に並べ替えるという構成をこの作品で試みている。

*ヒットせず。
公開当時はヒットしなかったこの作品のビデオがアメリカで発売されると、90万本という予想の3倍に上る売り上げを記録している。


*この作品は盗作だ。
本作のプロットがリンゴ・ラム監督の香港映画『友は風の彼方に』(87)のパクりだとの指摘がされた。特にラスト20分の展開が酷似しているのは明らかだった。
これに対してタラちゃんは堂々と「俺はこれまで作られたすべての映画から盗んでいる」と応えた。
黒澤明監督やスタンリー・キューブリック監督もパクっていると胸を張って認めた。
以来作品を発表する度に元ネタとなった作品のことを喜々として語るために誰もがタランティーノ作品を盗作だと言わなくなった。


【5 star rating】
☆☆☆☆(限りなく☆☆☆☆☆に近い)

(☆印の意味)
☆☆☆☆☆:見事な作品
☆☆☆☆ :面白い作品
☆☆☆  :平凡な作品
☆☆   :残念な作品
☆    :退屈な作品
Cineman

Cineman