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レザボア・ドッグスのEyesworthのレビュー・感想・評価

レザボア・ドッグス(1992年製作の映画)
4.8
【タランティーノ渾身のfirst bullet】

映画界の異端児クエンティン・タランティーノ監督が監督・脚本・出演の三役を務めた長編デビュー作。
ジョーという人物に雇われ、宝石店に強盗に入った6人の極悪人は、待ち構えていたような警察の不自然な動きにより任務に失敗し窮地に追いやられる。
「この中に裏切り者はいる」
疑心暗鬼になるメンバー達は、果たしてネズミを炙り出せるのか?というシンプルなフーダニット・クライム映画。
彼らはお互いの素性を知らず、互いの名前は与えられた色で呼び合う。大まかなキャラクター像は下記の感じ。

ミスター・ホワイト → 冷静で仲間思い
ミスター・オレンジ → 瀕死の重体イケメン
ミスター・ピンク → 主張の強い激情家
ミスター・ブロンド → 協調性なしイカレ男
ミスター・ブルー → 安否不明イケおじ
ミスター・ブラウン → お喋り。即死。監督

計画に失敗し、銃で撃たれ、重体のミスター・オレンジを連れたミスター・ホワイトは集合場所に向かう。そこにミスター・ピンク、ミスター・ブロンドと徐々にメンバーが集まってくると、タランティーノお得意の時系列バラバラのそれぞれの過去を交えたシーンが挿入され、物語は進展していく。
冒頭のジョージ・ベイカー『Llittle green bag』をBGMに8人の男たちが仕事に向かうタイトルバックは映画史に残るカッコ良さではないか。チェンソーマンOP『KICK BACK 』の冒頭でオマージュされるだけある。デビュー作にしてタランティーノ節全開の「冗長な掛け合い」が見ていて楽しい。他の映画だったら、「その会話いる?無駄でしょ!!」と林修氏に貶されるような部分が、タランティーノ作品には象徴的に必要不可欠なナンセンスだと思わされるのが不思議だ。特に冒頭でタランティーノ自身が語っているようなマドンナ『Like a Virgin』の巨根により処女の感覚を取り戻すビッチの歌論が印象深い。全然知らない曲だったので、そういう解釈で聞き始めるのもまた一興。カタギじゃない男たちの話なので、耳を千切られるような残酷なシーンもあるが、ジョークや小話が多くブラックコメディ感の強い作品なので、シリアスとコミカルのバランスが絶妙で心地よい。何より女性が一切登場しないため、ラブロマンス要素が無いのが好感。男だけの血塗られた世界とギャング特有の独特な絆を堪能したい時に打って付けの映画。ラストシーンは両者の痛みとやり切れない想いが画面越しに伝わってきて、こっちまで激痛をくらってしまう。救いがない。90分間の劇薬だ。
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