もとまち

草叢/不倫団地 かなしいイロやねんのもとまちのレビュー・感想・評価

3.9
脱・「団地妻」映画。一人の人妻と、彼女を取り巻く団地という空間がめちゃくちゃ立体的に描かれていた。子供たちのはしゃぐ声、廃品回収車のアナウンス。何気に凝られまくった音響。会話の「間」やちょっとした仕草の変化。日常のディテールをさり気なく拾い上げるのが堀禎一は巧すぎる。団地妻という存在にリアルな輪郭を与える速水今日子の演技力もヤバいし、尾上史高による研ぎ澄まされたダイアローグもすごい。『SEX配達人』以上に空気がヒリヒリしている。vs.佐々木ユメカの車内バトルとか緊迫感がエグいしな。ラストで見せる速水今日子の「変貌」。爽快だけれど、ゾッとするような。透き通ったカーテンの向こう、ベランダに出るシーン普通に怖いし。黒ずんだシミのような不吉さが最後の一瞬まで途切れず、こちらの安易な解釈を一切許してはくれない。
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