Eike

トゥルー・グリットのEikeのレビュー・感想・評価

トゥルー・グリット(2010年製作の映画)
3.8
コーエン兄弟にとって一つの到達点とも言える「ノーカントリー」を見た時に「こりゃ完全に西部劇だよな」と思ったので彼らがストレートな「西部劇」を撮ると聞いても特に違和感はありませんでした。
しかし本作「トゥルー・グリット」は予想からはかなり外れた仕上がりになっていてちょっと戸惑ったのも事実。
感覚的には「ノーカントリー」の方がよりウェスタン的だったような気がします(特に絵作りが...)。

本作がコーエン兄弟のこれまでの作品の中では異例なほど「普通のドラマ」めいた印象を受けるその一番の理由はやはり主役(の内の一人)が14歳の少女であった点。
本作は一応ヒロイン、マティの復讐劇の形態をとってはおりますが実際には彼女と酔いどれ保安官ルースター・コグバーン(J・ブリッジス)
それとテキサスレンジャー、ラ・ビーフ(M・デイモン)の3人によるロード・ムービーの印象が強い。
銃撃戦や決闘シーンも出ては来ますがそれを見せるのが主眼ではない。

そのため、アクション系のエンタティメントを期待すると肩透かしを食うことになりましょうがこの三人のアンサンブル劇として、それと少女の「冒険と成長」の顛末を描いた物語としては十分に楽しめました。

本家の”デューク”を意識してなのか、J・ブリッジスの演技からは相当に強い「作為」を感じましたがそれが嫌らしくならないのがこの人の強みですね。
マティを演じる新人ヘイリー・スティンフェルド嬢もこのベテランに対して一歩も引かない強気の演技を披露していて本作の最大の功労者は彼女であることは疑いようがありません。
意外だったのはM・デイモン。
ボーン・シリーズの成功に象徴されるように知的肉体派の演技者という称号を手に入れた自信の賜物なのかどんどん演技の幅が広がっている気がします。

本作がコーエン兄弟の最高傑作だとは思いませんが作品としては良くまとまった作品である気がします。西部劇にもまだ解釈次第では可能性があるんだなぁと実感させられました。
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