群青

オアシス:スーパーソニックの群青のレビュー・感想・評価

3.8
2016年劇場鑑賞映画46作目。


※めんどくさいほど長文です。


先日、SMAPが解散しましたね。
SMAPに何か思い入れがあるわけではないが子どもの頃からお茶の間を沸かせていた存在がいなくなるのはやっぱり寂しい。そういうのって大きいグループほどあり得ると思う。
当たり前が当たり前じゃなくなることの喪失感。しかもそれがファンならより大きい。大きいってもんじゃない。自分の一部が抜け落ちてしまうようなそんな感覚。

そして自分にとってのそれがoasisでした。
この作品はそのoasisというバンドの結成から世界の頂点に立った1996年のライブまでを描いた作品です。


自分のロックの原点であり、世界で一番好きなバンドです。もはや好き嫌いの次元ではなく自分の血肉になっているような存在ねすね、oasisは。まあとは言ってもバンド自体は大大大大大好きなんですけど。
それを踏まえた上でのレビューです笑
したがってoasisを知らない人には全くピンとこないし、なんなら熱がありすぎて引くほどかもしれません笑


まず、劇場で大音量でoasisの曲を聴けること自体が、もうワタクシにとっては昇天するほど気持ちのいいことです笑
Rock 'n' Roll Star、Live Forever、Columbia、などなど曲がかかるたびにアドレナリンがドバドバ出て、これ劇場じゃなくてライブ会場のモニターに映してくれよ、俺暴れるからよ、って思いました笑

しかも素晴らしいのが未発表曲のTake Meやoasisの前身バンドであるRain時代の曲がかかったり、なんならMorning Gloryのアナログレコード版にしか収録されずつい最近のリマスタリング盤でやっと収録されたBonehead′s Bank Holidayなども流れたこと。え?なんで未発表曲を知ってるかって?ブートレグや未発表を集めた非公式アルバムを買ってたからだよ!笑
ちょくちょく集めといてよかった!笑

次に、oasisを語る上で欠かせないメンバーのギャラガー兄弟の生き様がこれ以上なく盛り込まれていて見ごたえがあった。というか、この作品はほとんどそこに焦点を絞っていると言っていい。


話は変わるが、今作以外にoasisの映画でLive Forever(言うまでもなくoasisの曲から取っている)というドキュメンタリー映画がある。
それにはoasis以外にもblurやPulpやThe Stone Rosesが出ていた。blurなんてoasisの話題では必ずと言っていいほど出てくるバンドだ。この話をするとレビューからどんどんずれるので割愛するが、要はoasisのライバルだったんですね(メディアが盛り上げるために構図を勝手に作り上げただけだが)。その作品はoasis、blurを筆頭に、当時の音楽シーンを席巻していたバンドたちを出して90年代ブリティッシュロック(ブリットポップと呼ばれていた)がどのように盛り上がり、また消えていったかが描いている。これがoasisを語る時の一般的な切り口なんですね。時代を彩ったバンドというのは音楽以外のものにまで影響を及ぼすから。ファッションや政治にだって出てくる。

しかし今作はblurのbの字も出ない。辛うじてThe Stone RosesのThis Is The Oneが流れるくらい。
あくまで、ギャラガー兄弟を中心としたメンバーやアルバムの製作スタッフの話に終始している。
oasisというバンドと、そこにいたメンバーがその時何を考え、そして2009年の解散につながっていったか、というものなのだ。
したがって、Live Foreverより普遍的なテーマになっている。

それは何かの集団の成功と凋落の話。
成功によって、より大きな存在にバンドの方向の舵を取られ、自分たちとは無関係に進んでいく。バンドが大きくなりすぎて自らの意思では止めることができなくなる。そんな虚しさを描いています。


やっと話は戻って、ギャラガー兄弟が生まれた頃のインタビューから始まるのでもう楽しすぎて楽しすぎて笑
この二人はかなりやんちゃで正直ドン引きなくらいやりたい放題している笑 どれくらいやりたい放題かというと、それを書くとまたレビュー伸びるので省略笑 しかしこんだけ、やりたいと思ったことをやる男になりたいな、と強く思った。悪事を働きたいというわけではなくその精神性ね笑
何がこの二人の魅力かって、言ってることはすごくて到底無理そうなのにそれを実現させることなんですよ。

仕事はろくにないし失業保険をもらっている。しかし母を愛し、この腐った世界でロックンロールでビッグになりたい。それを実際にやり遂げて、デビューからたった3年で一つのライブで26万人の人を集めるにまでなるんだから。かっこいい以外何もない。曲のクオリティも口で直接すっげえ曲って言っちゃう。謙虚とかそんなもんじゃない。彼らは自分たちの曲が素晴らしいと信じている。そして実際聞くとほんとにやべえ!ってなる。言ってることがその通りなんですよ!こんなにかっこいいことはない!

ほとんど歌詞に意味はないと言いながらも初期の作品はこれ以上ない励ましの言葉になっているところもいい。
言葉の一つ一つが自信に溢れ、他の誰が何を言おうが構わず前に進め、お前はお前なんだからって肯定してくれる。

彼らは最初から何もなかったわけで、それを身に染みているからこそ、そこから這い上がることの大切さを信じている。前に進むことだけが、何かをなし得る力だと知っている。

そこまでの情熱を燃やしながらなぜバンドは2009年に空中分解を起こしてしまったのか。


観ていくと切なさがこみ上げてたまらない。
解散するまでにも何度か大喧嘩をしていたし、解散でさえも時が経てばまたひょこっと集まって始めるか、となると思っていた。The Stone Rosesだって最近復活したし、その他の有名なバンドも解散の後復活してきたから。
しかしこの二人だけはどうにもならないんじゃないか、と思えてくる。

何よりこの作品が世に出たことによってoasisの存在が過去になってしまったことを改めて気付かされてしまった。1993年から2009年までバンドの歴史があったのにも関わらず、映画は1996年までしか描いていない。

ラスト、ノエルのインタビューが重なる。そしてそのままあの曲を流してのエンディング。どうでもいいと言っていた歌詞が字幕になり、ひょっとしてoasisは1996年の時点で終わっていたんじゃないかという問いかけのような形で終わる。切ない。せつねえよ…

その後に発表されたアルバムも好きだがやはり劇中で描かれた1枚目と2枚目がoasisというバンドを最も的確に表していたアルバムなんだなと思いました。

でもこれから先もずっと自分の中ではロックの頂点に立っているバンドなことに変わりはない。悲しい時も楽しい時もoasisの曲があるんだ。ファッキンって言い合っている二人だけどいつか…いつか…を想像しながら今日もoasisを聴きます。

本当に最高の作品でした。
群青

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