半兵衛

闇を裂く一発の半兵衛のレビュー・感想・評価

闇を裂く一発(1968年製作の映画)
4.0
子供を人質にした銃を持つ凶悪犯を確保するため、極秘裏にオリンピックの射撃候補生と刑事がタッグを組み捜査を開始する…という序盤からワクワクさせられるし、刑事たちがいくつかの空振りを経てじわじわと犯人を追い詰めていくと同時に刑事たちのキャラクターを個別に描いたりユーモアのある場面や台詞回しを配置して観客に適度な緊張と緩和をもたらしていく菊島隆三の脚本が素晴らしすぎて最期まで楽しめた。

若い峰岸徹とベテラン刑事露口茂が対立しながらも捜査していくうちに仲良くなっていく過程はテンプレだけれど、熱気のある峰岸と老獪な露口という二人の役者の個性が役柄とシンクロして見ごたえがあった。そんな露口が刑事の勘に頼りすぎたがゆえ致命的なミスを犯してしまい、非情な結末を迎えてしまうというシビアな語り口に痺れる。

峰岸徹が熱血漢すぎて感情を出しまくってしまい少しウザい奴になっていたりそれまで地味な捜査をしていたのに終盤いきなりアクション映画と化したりと色々気になるところはあったけれど、全体的には充実した内容に仕上がっていて満足。

加藤武や高橋悦史、下川辰平といったベテランに加えて、早川雄三、北原義郎、藤山浩一、仲村隆といった大映の脇役俳優たちが地味ながらもいぶし銀な演技を披露してドラマを盛り上げる。あと若き日の平泉成や樋浦勉の活躍ぶりや、同じフレームに佐藤允と今福将雄が存在するという岡本喜八ファンならニヤリとしてしまうサービスシーンも見所。

そして1968年当時の東京の風景が堪能できるのもこの映画の醍醐味だったりする、まだ開発途中の豊洲や当時北区にあった東京スタジアム(ロッテと阪急戦がおこなわれている)の映像が見られるのがレア。
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