“ノーベル文学賞”受賞者 故郷に凱旋。
40年も前にアルゼンチンの故郷を離れ、スペインで優雅に暮らすマントバーニ。
故郷に「名誉市民」として迎えられるが、あまりにお粗末な歓迎ぶりに笑うに笑えず。
舞台はアルゼンチンの架空の田舎町サラス。
しかし、勿論誇張しているだろうけど、ここまで田舎の町と住民をコケにして良いものか。
町はすっかり廃れてしまい過疎化が進む。
人々も狭すぎるコミュニティの中でしか生きていない。
一見人が良さそうだが、無知で低俗で野蛮で嫉妬深い自分勝手な住民たち。
あまりにシニカルで、笑うに笑えない。
かと言って、マントバーニも高慢で人々を見下し、でも性欲には勝てず、全く聖人では無い。
質素な歓迎行事、小説に無関心な人々への講演会、親友と結婚した元恋人との再会。まあこの位はいいのだけど。
若い女性に言い寄られ関係を持ったり、絵画コンクールの審査に不満を持つ人に脅されたり、次第に名誉市民が身の危険まで感じるようになっていく。
マントバーニの望郷の念は、瞬く間に木っ端微塵となる。
しかし、数日間の滞在で小説のネタには事欠かない、あらゆる体験をしたのだから、マントバーニにとっては大きな糧となったことだろう。