金宮さん

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版の金宮さんのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

最終的に殺人につながることはわかっているので、何故そうなってしまうのか?をゆっくり本当にゆっくり描いていく。

いい意味で余白だらけのつくりのため何故?の部分が想像し放題。自分なりの解釈としては

ーー怠惰だったり恋愛での猜疑心が自己嫌悪を生み、社会的閉塞感や生活環境の悪化によりそれがループ的にどんどん助長されるなか、生活の支えだった女神的な人に「どうせ変えられないだろ?」と図星をつかれてそれを否定する衝動でやってしまったーー

といった感じ。ただ、想像にとどまり深く共感はできなかったかな。対象が衝動殺人なので当然だけどね。

物語中盤退学して以降のシークエンスで緊張感と文学性がガンガン増していき、世界中での今作の高評価も頷ける感じで急に巻き返してくる。

尚、キャラの魅力は圧倒的に小猫王ですね。身も蓋もなく言ってしまうと、主人公周辺がやってるのって、閉塞的状況における「痴情のもつれ 〜 もじもじ若者バージョン」で割と気恥ずかしい要素もあるんだけど、小猫王は恋愛どこ吹く風で夢を追っててかっこよさが段違いでしたもん。閉塞感状況は自分の才能とやる気で打破するぞ!って感じ。高音ボイスの小さいヤンキーって気合い入ってるよなーっていう偏見もあり、終始釘づけでした。

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・不可解な実在事件は何故起きたのか?を長尺で描くという点で、町田康さんの「告白」を連想した。(あちらは小説だし、こっちの方が先だけど)

・強キャラヤンキーであるハニーが「戦争と平和」を読んだってドヤってるシーン。ろくでなしブルースで川島が「罪と罰」読んでいたのを思い出した。厭世ヤンキーはロシア文学を読むというモチーフは割と好みなんだけど、もしかしてこの作品が起源だったりするのかしら?という割とどうでもいい想像。
金宮さん

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