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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のHarutoMのレビュー・感想・評価

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物語は軽快でありながら残酷で、映像表現はエキゾチックでありながらどこかノスタルジーを感じられる。
蝋燭や街灯の淡いライティングを用いたシーンがいくつも登場しており、ドアガラスにほとんど見えないほど薄らと映る小四と小明の影で魅せる会話シーンが映像的に印象に残った。
この映画のエンディングはとても切ない。殺人を犯した張震(小四)を眼前に居た堪れない気持ちになる。それはやはり友人グループ(殊に小猫王や小馬)以上に、家族という大きな存在を失うことになるからだ。小四の父が劇中で言っていたように最後に残るのは家族である。そしてこの世のあらゆる不条理に努力で立ち向かっていかなければならないという信条から踏み外してしまった事に落胆を覚えながら、たっぷりと時間を費やして主人公の少年に感情移入している観客は残酷な結末に怒りさえ覚えることだろう。
(20240429)
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