すずきひろし

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のすずきひろしのレビュー・感想・評価

5.0
いつの時代も、男にとって女は、残酷で美しいこの世界そのものであり、そんな女を自分だけが変えてみせる、というのが男の哀しい思い上がりであるように、台湾に撤退した国民党が、いつの日か中国本土の共産党を駆逐するだろう、という外省人の願いもまた哀しい思い上がりでしか無い。そういう諦念に裏打ちされていながら、エドワード・ヤンは、殊更にその残酷さを嘆いてみせるよりも、残酷でありながら尚、美しい世界の有り様をひたすらフィルムに焼き付ける。