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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のIのレビュー・感想・評価

5.0
とにかくいろんな要素がつまっていて、様々な角度から様々な考察や見方が可能。その人の状況や経験によって印象がこれほどまでに変わる映画はあるのだろうかというくらい。

恋愛、家庭、大人と子供、子供の危うさ、宗教、戦争、台湾文化、抗争、裏切り、衝動、尊敬、軽蔑、自惚れ、不安、安心、自由、少しの希望、、、

終わったあと何とも言えない気持ちになり、様々なことが頭をよぎった末に、
二人の少年少女の不幸な結末にただただ涙が流れた。

混沌とした社会で、何かが少しずつずれている世の中で、悪が積もって積もって積もって積もって、遂に、幼い二人が犠牲になったのか。

とてもやりきれない。社会の問題は大人だけに関係するのかというと全く違くて、悲しいかな犠牲になるのは弱者なのだろう。


ところで、小明は何だかマリアとか、もしくは神話の女神とか、そんな印象を受けた。なぜだろうか、うまく言葉にできないが、
「社会と同様わたしを変えることはできない」
この言葉とか正に。
変えるのではなくて、愛すること。
人も社会も人生も同様。
受け入れるって決してネガテイブなものでない。




個人的な話、
一度映画館に観に行ったら、売り切れで、リベンジの鑑賞。
アンコール上映が行われる、売り切れの回も一度や二度ではない、ということからもっとわかりやすく名作、劇的な内容かと思っていたらそんなことはなくて、
東京の文化度の高さに改めて驚いた。
アンドレイタルコフスキーのオールナイト上映もたくさんの人だったし、みんなすごいなぁ。私は正直無理して背伸びして観に行っているところがあるので。
それにしてもアンドレイタルコフスキーの映画のことを帰り道なんども思い出したのはなぜか。共通点とか、はっきりとは言い表せないし、言い表せたとしても恐らく超個人的なものであろう。ただ、両者とも人生の中で何度も見直そう。その度に新たな発見があり、捉え方も変わるだろう。それができる映画はすごい。
今のわたしは愛とは、人生とはみたいな盛大なことばかり考えていて、これも何年後とか、もしかしたら何ヶ月後とかにはまた感想が変わっているかもしれない。
恋愛真っ最中の人だとどんな感想になるのか聞いてみたい。

とにかく、間違いなく傑作である。
映画館で観れて幸福だった。
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