ペイン

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のペインのレビュー・感想・評価

4.5
“『ゴッドファーザー』と小津安二郎の間に位置する、家族についての完璧な映画。”By ヤヌス・フィルムズ

4時間、“映画を観ている”ということを忘れさせられ、ただただ没入して観ていた。台湾ニューシネマを代表する、いや世界映画史に残る名作。

ハッキリ言ってこの映画には観客を喜ばせるためのサービスだとか、気遣いなるものは一切ない。ただその分と言うべきかどこをとっても不自然な所が見当たらず、少年達のただならぬ実在感にまず圧倒される。やはり“子役演出が巧い監督=巨匠”の法則である。

どの画も計算され尽くしているはずなのにそう見えないところにこの作品の“凄み”がある。そして悲惨さはあってトーンが明るい作品なわけではないのに、どこか華々しく、少年少女の十代の若い息吹のようなものが画面から溢れ出ている。だからこそ我々は惹き付けられるのかもしれない。

主演のチャン・チェンさんが昨年、来日されてインタビューにて“この作品に出たことで人生がガラッと変わってしまった”と言っていた。良くも悪くも影響力絶大な作品。作り手を、また観客の人生をも変えてしまいかねない1作。

私も観終わった後はしばらく放心状態で正直なところ、未だにこの作品を完全には租借しきれていないのでこれから複数回観ていきたい次第。

こういう作品を観てしまうと良くも悪くも下手に容易く映画を観れなくなってしまうというか(もちろん観るけれどw)、地上波のテレビドラマなんかは目も当てられなくなってしまうかもしれない。とにかく好き嫌いは人それぞれだけれど、1度は観ておくべきなのは間違いない。
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