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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のKotaのレビュー・感想・評価

4.0
“信念を信じる勇気がないなら、生きる意味がない。”

所謂“台湾ニューシネマ”の映画は初めてで、敢えていままで避けてきたってのもあるけど、映像の節々から発せられる情報量がえげつなくて、こっちも腰を据えてみないと置いていかれてしまう。

大まかなストーリーや台湾ニューシネマの遍歴についてはどこか他のよくまとまったサイトを見た方が良いから書かないでいいよね。個人的にはやっぱり撮影の仕方に度肝を抜かれた。カメラが動くんじゃなくて人間が動くんだよねこの映画。被写体がフレームから外れてもそのままカメラは固定されているし、台詞も画面外から聴こえてくるという(実は計算され尽くされているんだけど)、その異様な構図に吸い込まれていってしまう。音楽は後から挿入するんじゃなくて、全て撮影の時に収められた“生の音”。もちろんCGなんてないし、ライティングも懐中電灯や街灯などほとんど手を加えていない“生の光”。主役の小四を演じたチャン・チェンは当時まだ新人。カメラがあれば誰でも撮れそうな映画が、センスによって誰にも撮れない映画になっているもう訳わからん作品。

全体のストーリーテリングは勿論あるけど、一つ一つのシーンが美しくて映画というよりは、絵画を順番に見て回っている感覚に近かった。最初はストーリーについて行こうとせずに“絵”を楽しんで、そのあとに一気にストーリーを“読む”ことをオススメします。4時間なので精神的に余裕があるときに。
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