Kawaguchi

牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版のKawaguchiのレビュー・感想・評価

4.7
少年は光を求めて、冒頭で電球に灯りともし、懐中電灯を盗みます。しかし物語が進むにつれ、自ら電球をバットで壊し、盗んだ懐中電灯を返します。

劇中にでてくる、トルストイ「戦争と平和」で描いてる様に、わかりやすい手短なものを捉えて、これが事件のすべての原因なんだと決めつけてしまう人間の愚かさを描いています。現実にもありますよね。「容疑者のメール履歴によると、元交際相手への嫉妬が原因とみられ、云々」みたいなニュース、すべて「嫉妬」の一言で片付けられてしまいます。その根底には私たちが容易には辿り着けない長い脈略と事情が存在するのです。

「真実」は複雑に絡み合い、条件が無数に重なり合って起こってしまった。カオス理論やバタフライエフェクトの様なものなんです。「解き明かせない」ということを解き明かしていく物語です。少女を殺してしまったのは、たまたま私たちでは無かっただけなんです。
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