このレビューはネタバレを含みます
地味で面白味のない日々の中でも、何かと必死で戦っている人がいること。誰かがそばで笑ってくれる、おはようと言ってくれる、ほんの些細なことで一喜一憂できる人間らしさがこれでもかと溢れていた。
何と言っても特筆すべきは、もはや日本一のコント職人トリオと言っても過言ではない・東京03の角田さんのコメディリリーフとしての存在の大きさ。作品全体の空気を柔らかくコミカルにさせる歯車として大きな役割を果たすだけだなく、一見するとスベリ芸にも思える犬の鳴き真似がちゃんと伏線になって終盤の見せ場に繋がるシーンは最高に笑える。
また、笑ったときのえくぼが魅力的な武田玲奈は、どもってしまうため人と会話をせず心を閉ざしたヒロインを見事に演じていたし、ボクシングのトレーニングシーンは痺れるほどカッコよかった。吃音症の人が大勢に注目されている前でマイクで話すということにどれほどの勇気がいるものなのか、痛いほど共感して胸が締め付けられた。
岡山天音のひょうひょうとしてナヨっとしたところから、決めるところはしっかり決めてくれる安心感のある演技力は言うまでもなく。ちょい役だが山﨑賢人の友情出演シーンも楽しめる。
序盤とは見違えるほど成長した終盤のポエマーズのリベンジマッチは笑いあり、感心ありで、胸に深く刺さって優しい気持ちになれる。映画館で観たかった…と後悔してしまうほど当たりな邦画だった。