サミュエル・ベケットの構想に基づく作品『フィルム』についてのドキュメンタリー。
ベケットの貴重な肉声が聞ける個所など、ベケット・ファンにとっての史料的価値は十分。また単に一作品の舞台裏についてのインタビューや解説にとどまらない批評的なコメント――撮影のボリス・カウフマンへの言及からジガ・ヴェルトフの名前を想起し、彼のドキュメンタリーと『フィルム』の試みを比較する個所など――も見られ、この点についても評価できる。
130分という長尺にいささかの退屈も感じなかったとは言えないが、十分優れた作品。