Motoki

フェンスのMotokiのレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
4.1
大学の授業の教材がこの原作戯曲だったので、併せて映画も鑑賞。

ブラック・アメリカン的な要素が強い作品かと思ったら、その要素はもちろんあるけどそれ以上に非常に普遍的なテーマをいくつも見出すことができた。

一家の大黒柱として必死に働くが、家族との関係で葛藤し衝突する父親。
夫や子供たちを支えようと努力するが、内心には悩みを抱えた母親。
父に反発し、自分の道に生きようとするも、父親の影を払拭できない息子。
父に金を借りに来るような放蕩者のミュージシャンの息子。
戦争での負傷で、知的欠陥を抱えてしまった叔父。
こうやって並べてみるとなかなかインパクトのありつつ、共感出来そうな登場人物で、面白そうな作品だと思うが実際面白い。

結局誰も父親の存在を自分の中から消すことはできないし、何かを求めれば求めるほど、何かを失っていく。あるいは自分にあるものを削っていくということになるんじゃないだろうか。
また、自分は何を与えたか気にするより、何を与えられたかを気にする生き方を選びたい。
というのがこの作品を味わってみて痛感したこと。

非常に原作に準拠した描かれ方で、参考になった。映画としても面白い。何よりキャストの演技が素晴らしい!

個人的に気に入らなかったのは、最近の映画にありがちな、「シーンの雰囲気表現しました」みたいなオーケストラの音楽。
それがこの作品の特異性というか、エグ味みたいなものを清めて、俗物っぽい感じにしてる気がする。
もっとイナタイ感じになってもいいからブルースやジャズ、当時のソウルなんかを使って欲しかったと思う。
目立つと悪いからほんとに小さい音量で、さりげなくで。


2回目 4/23 Blu-ray
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