福福吉吉

フェンスの福福吉吉のレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
3.5
清掃局でごみ収集の仕事についているトロイ・マキソン(デンゼル・ワシントン)は妻のローズ(ヴィオラ・デイヴィス)や親友のボノとともに貧しいながら毎日を過ごしていた。しかし、息子のコーリーのフットボールでの大学推薦の話にトロイが反対し、コーリーに無断で推薦拒否をしたため、親子関係が崩壊する。

ストーリーとして緩急がついており、飽きずに観ることができました。しかし、本作の主人公であるトロイの性格がかなり個性的で、私は観ていて受け入れがたく思いました。
本作は1950年代ということで人種差別が当然のようにある時代だったこともあり、トロイは黒人がまっとうに生きる上で、音楽やスポーツに夢を持っても無駄であるという考え方を持っていました。
また、トロイは子供を自分の所有物のように扱い、自分の命令に絶対服従することが当然と思っていて、現在の価値観で見ると非常に横暴な性格に見えてしまいます。息子のコーリーがトロイの言いつけに「Yes,sir!」と答えるシーンはとても異常に見えました。

過去に人種差別により満足に生活できず、夢見た野球でも成功できなかった過去からトロイはコーリーを自分とは違うまっとうな生き方をして欲しいという願いから大学推薦を拒否するのですが、あまりにも自分勝手でトロイに賛同できませんでした。
挙句の果てに、トロイは15年もの間、尽くしてくれたローズに対してとんでもないことをしでかしたので、呆れて何も言えませんでした。

トロイを演じているのがデンゼル・ワシントンなので、普段の正しさの象徴のようなイメージの真逆を行くキャラクターだったので、驚きました。とにかくよく喋るし、自己弁護しまくるトロイの演技は観ていて面白かったです。
それを上回る演技だったのがローズ役のヴィオラ・デイヴィスでした。トロイに対して涙ながらに訴えるローズの気持ちが心に突き刺さりました。素晴らしい演技だったと思います。トロイよりローズに感情移入しました。

トロイの酷さばかりを言ってしまいましたが、「家族」というものを描いた人間ドラマとして良く出来た作品だと思います。トロイが自己満足の部分が強いながらも、ローズやコーリーのために生きたことも事実であって、トロイ自身が言っていた「清濁併せ吞む」人生を描いた作品でした。
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