千年女優

フェンスの千年女優のレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
4.0
公民権法制定前の1950年代。ニグロリーグで活躍した元野球選手で、人種の壁からMLB挑戦を断念したトロイ・マクソン。現在ではゴミ収集人を勤めて堅実な暮らしをモットーに家族を養う彼が、方針に背いて夢を追おうとする息子たちとの確執や自身の行動が原因で献身的だった妻との間に生まれた軋轢に苦悩する様を描いたドラマ映画です。

オーガスト・ウィルソンが書き上げてピューリッツァー賞のドラマ部門を受賞した戯曲をオスカー俳優のデンゼル・ワシントンが自身の監督・主演で映画化した作品で、名作だった舞台の良さを損ねることなく映像化したことが賞賛されてアカデミー賞では作品賞を含む四部門にノミネート。ヴィオラ・デイヴィスが助演女優賞を受賞しました。

一から十まで本当に駄目な男の話ですが、この時代に夫である事、父である事、そして黒人である事の重圧を映し出します。フェンスの外にボールをかっ飛ばすことを生業としていた男がフェンスの中に閉じ込もる悲哀。妻の大いなる慈愛。彼自身は救われずとも家族がフェンスを乗り越えていくささやかな予感。機知に富んだ重厚な一作です。
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