すごく良い映画。人種差別系の作品かと思ってたら家族ものだった。父親のトロイが抱える父親への憎悪や弟への後ろめたさ、戦争経験、育ちや人種のせいで思い描いた人生を送れなかったという意識。色々なものが錯綜しているのがリアルに感じられて、自分のような人生を送らせないために家族を思ってしているつもりの行動が、いつのまにか父親と同じように家族を傷つけていく。表面だけ切り取ると自分勝手に自己擁護の正義を振りかざすクズ男になるんだろうけど、最後の最後で育ちの悪さが出てくる、父親の影に侵食されてしまっているところは切ないし、カタルシスを感じた。一番こうなりたくなかったのはトロイ本人のはず。可哀想な息子のコーリーもトロイと同じようになってしまうのかと不安になるところではあるけど、ラスト葬儀に出ないと言いだしたコーリーに母親が諭すシーンに、彼は父親の影を払い、自分として違う人生を歩んでいくという暗示にもとれたし、そう願う。デンゼル・ワシントンは「イコライザー」の人格者キャラが定着してるけど、こういう役も出来るのはすごい。弟ゲイブのキャラも演技も素晴らしかった。なにか、憎悪しているうちは親の影は振り払えないというようなものも感じたし、すごく深みのある映画だったのかもしれない。
