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フェンスのkuuのレビュー・感想・評価

フェンス(2016年製作の映画)
3.9
『フェンス』
原題 Fences
製作年 2016年。上映時間 139分。
オスカー俳優デンゼル・ワシントンの3作目となる長編映画監督作。
因みにその監督作品は今作品以外に02年『きみの帰る場所 アントワン・フィッシャー』、『グレート・ディベーター 栄光の教室』(07)があります。
アメリカの劇作家オーガスト・ウィルソンによる、ピューリッツァー賞などを受賞した名作戯曲『フェンス』を、10年にリバイバル上演された舞台版で主演し、トニー賞主演男優賞を受賞したワシントンが、自らのメガホンで映画化。
ワシントンは監督のほか製作、主演も兼ね、舞台版でもワシントンと共演したビオラ・デイビスが妻役を務めている。
1950年代の米ピッツバーグを舞台に、元プロ野球選手でいまはゴミ収集員として働くトロイと妻ローズ、そしてその息子たちと、アメリカに生きる黒人家族の人生や関係を描く。
第89回アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門でノミネートされ、ビオラ・デイビスが助演女優賞を受賞した。

トロイは人種差別によってメジャーリーガーの夢を絶たれ、ゴミ収集員として苦しい生活を送っていました。ある日、息子のコーリーがアメフトのスカウトマンに見出され、大学推薦の話が舞い込む。
しかし、トロイは進学に反対し、コーリーの夢を潰してしまう。
その姿勢は家族との間に溝を作ることに。。。

デンゼル・ワシントンは、アフリカ系アメリカ人であろうとなかろうと、個人的に大好きな俳優の一人です。
爆発的なアクション映画であれ、ワシントンは自分のすべてを捧げてきたし、監督としてカメラの前だけでなく後ろにも立ちたいと願ってる。
2016年、最も洞察に満ちた真の映画のひとつ『フェンス』で、彼は再び二役をこなしてる。
著名な劇作家オーガスト・ウィルソンが、ピューリッツァー賞を受賞した自身の戯曲を脚本化した今作品は、ワシントンが1950年代後半のピッツバーグで、当時の世間一般に対応するアフリカ系アメリカ人の平凡な衛生作業員トロイを演じる。
息子が大学進学と同時にフットボールに打ち込みたいと云い出したとき、トロイは息子から手を引こうとするが、息子は今以上に疎外感を募らせることになる。
トロイにはボノ(スティーブン・ヘンダーソン)という親友がいるが、彼はいまだに自分自身の暗い部分に悩まされており、それは彼と妻ローズの18年間の結婚生活を脅かすものである。
舞台劇を映画化するのは、素人目線でも、最も簡単なようで容易ではないと感じる。
なぜなら、舞台で成功したものを映画化するには、実際に息づくセットと、かなりの量が必要やからやと思う。
でも、幸いにもワシントンは、『FENCES/フェンセス』の舞台となった実際の時代とさほど変わっていないと思われるピッツバーグの一角で撮影することで、それを実現する方法を見つけた。 ウィルソンの舞台劇と脚本には、その時代にふさわしい言葉やスラングがふんだんに使われている。
しかし、ある程度の不快な言葉遣いは、このような物語には必要なものであり、特に、カメラの両側にワシントンがいるだけでなく、妻役のビオラ・デイビス近くで彼が暴露する恐ろしく卑劣(個人的にこないな事は絶対に許さない一つです)秘密にもかかわらず、どうにか寄り添うという、これまた素晴らしい演技を見せていることを考えれば、なおさらかな。
脇役ではローズとトロイの息子コーリー役のジョヴァン・アデポとジム・ボノ役のヘンダーソン、そして、戦争で負った頭の傷のせいで精神がおかしくなっている弟役のマイケルティ・ウイリアムソン、
第二次世界大戦に従軍したときに負った頭部の傷が原因で精神を病んでしまったため、政府から3000ドルの見舞金を受け取り、トロイと同居していた時期もあったが、現在は一人暮らしをしていて、また、近所の子供たちから受ける嫌がらせに頭を抱えているって、かなりリアルな設定。
また、給料日になると10ドルローンを借りに来るワシントンの息子役のラッセル・ホーンズビーが巧みやった。
アフリカ系アメリカ人のキャストと物語ではあるが、『FENCES/フェンセス』がうまくいっているんは、それが普遍的で、肌の色や民族に関係なく、どの家庭でも起こりうる話だと感じられるからに違いない。
ワシントンとウィルソン(2005年に他界したため、『FENCES/フェンセス』が大スクリーンで上映されることはなかった)は、このことを非常に明確にしているが、重苦しくなく、会話シーンは長くなりがちだが退屈することはなく、アーサー・ミラーの名作『セールスマンの死』と正当かつ好意的に比較されている。
ちなみに、『セールスマンの死』のあらすじは、
年老いた63歳のセールスマン、ウィリィ・ローマンとその家族の物語。 自立出来ない2人の息子や、過去の幻影にさいなまれつつ慨嘆するローマンは、誇りを持っていた仕事まで失い、最後には自ら死を選ぶ。
その保険金で家の月賦が完済されたことを嘆く妻の独白で幕が閉じるって感じ。
これらすべての要素によって、『FENCES/フェンセス』は個人的には2016年最高の映画のひとつやと思う。
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