80年代の戯曲をもとにした映画。ここ最近で一番見応えのある映画だった。
舞台の雰囲気を生かしながらも、映画の空間も表現できている。何よりもデンゼル・ワシントンはじめ俳優の演技！最近のハリウッドのわかりやすいセリフと奇抜さ第１主義からは抜けん出ている。
身勝手な男の話、とかたづけてしまいたくない。人間の弱さ、葛藤、過去のトラウマ。全部を引き受けて生きていかなければならない辛さ。たまたま主人公が50年代、60年代のアフリカ系アメリカ人男性だからこそ、社会の差別の辛酸なめまくって、一家の大黒柱という責任の重圧を受ける象徴となっている。かといって彼のしたことは肯定できないけれど、問題はそこにはないのだ。ラストの妻の神々しさにこそ、意味がある。
詩的かつ物語としてもしっかりしたいい映画。
