黒人差別の残る50年代、ゴミ回収の安月給で2人の息子を育て上げたトロイ。上はジャズミュージシャンを目指し、下は大学からフットボールのスカウトが来ている。仕事終わりには庭先で長年の友人と一杯引っかけ、メジャーリーグに入りかけるほどの野球センスがあった昔話に花を咲かせる。フットボールの道に進んでも差別に邪魔されて活躍できずに終わることを危惧して、トロイは息子のフットボール推薦に反対する。不確実な世界で失敗する姿を見るくらいなら堅実な仕事に就かせたがったが、若い息子は取り合わない。上の息子は恋人に働かせトロイに金を無心する。トロイの心の支えは愛するローズだけだった。
そんなアメリカ版『男はつらいよ』のような人情モノ映画じゃなかったんですか…？ 観ているこっちが辛くなってくるんですが。平均点数はトロイに対する評価じゃないの？ 2か月以上前に観たのにこんなレビューしづらくて尾を引く映画勘弁して。
見る人が見れば初めから、この主張は間違っているという感想を持つことが出来たんだろうが、時代背景で差別が厳しいままなのかなと思わされてしまう。それにあんな風に正論を振りかざす人間が実生活で近くにいるとそれが正しい姿と麻痺してしまう。堅実で地に足付いた目標が生活の安定には不可欠なのはごもっとも。自分自身浮ついたことを言って周囲に迷惑をかけてきたので胸に刺さる言葉ばかり。なのに、ちょっとトロイのことを信じかけてたにこのクソオヤジがぁ。ローズのことを考えると後半からどんどんどんどん辛くなる。見ていられない。だのにこいつは保身のためにまくしたてるばかりでホントクソ。
差別がトロイを作ったのか、トロイが弱い人間なのか判断が難しい。差別で夢を断たれたことなんてないから同情心は湧く。それを体験したことない人間が自分はトロイにはならないとは言い切れない筈だ。しかしそうはいっても、自分の都合のいいように詭弁をたれて、相手の落ち度にしか目がいかない、身近にトロイがみたいなのがいたらさっさと縁を切りたい。自分の中ですら矛盾した感想が出るんだから、トロイ的な人の中ではどれだけの矛盾に目を瞑っているんだかわからない。気づかないうちに矛盾を隠してエラそうな態度を取っていないか反省したくなる。
トロイというブラックホールがいるので周囲の反応に納得して観れる。息子やローズがトロイに自分の不満をぶちまけるシーンはカタルシス。最終幕で息子は何を思い出して泣いてるんだ？と、映画観てきて良い所ひとつもなかったじゃねぇかとツッコミたくもなったが肉親が逝くと無条件に泣いちゃうものだよな。死んで平穏を迎える人もいるんだよな。
関係ないけど2017年ランキング更新しました。良ければ見てください。
