はなたまご

ムーンライトのはなたまごのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
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とある男の葛藤を幼少期、青年期、大人の3つの姿から描いた作品。

歪んだ社会の残酷な現実に為す術も無く傷ついていくシャロンの姿は見ていてとても辛かった。特に青年期の描写は男性らしさの保持と暴力という点において強く印象に残った。旧来のイデオロギー的男性観には女性蔑視の傾向や暴力的・破壊的指向といった「Toxic Masculinity(有害な男らしさ)」の危険性が指摘されており、そうしたジェンダー観を社会全体で見直すべきだという声が高まっている。しかしそうした風潮が逆に「弱い男性だと思われたくない」という気持ちを強め、旧来の男性観を正当化する皮肉な論調も同時に生み出している。この映画ではそうしたToxic Masculinityの一側面を描き出そうという試みが見て取れた。

自分を守るためには暴力を覚えるしか無い。そんなふうにがむしゃらに強くなろうとした主人公達が、心の繊細さや脆さをさらけ出して再び繋がる瞬間はとても感動的に思えた。

「月の光の下では黒人だって青く見える」
見えている部分だけで他人のすべてを判断してはいけない。何度だってそう自分を戒め続けなければならない。