うめまつ

ムーンライトのうめまつのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.0
月の光が身体中の隅々まで蒼く満ちてひたひたになった。月が古来から人に愛されて来たのはきっと孤独に見えるから。仲間の星が見えない夜にも夜空に独りぽつんと浮かんでいて、たまに恥ずかしがって細く翳ったりしている、その何処か寄る辺ない姿に自分の寂しさを投影していたんじゃないのかな。まるで遠くに居る自分の片割れを見るように。

あの夜の砂浜は、あの瞬間あの二人にしか辿り着けない、時空のエアポケットみたいな場所に見えた。あんな時間を共有できたらそりゃ運命の人になっちゃうよね。リトル(少年期)とシャロン(青年期)はかなりシームレスな移行だったのに、ブラック(成人期)になった途端あまりにいかつくなってたので「私のシャロンは何処!?」って一瞬なったけど、ちゃんと三人とも瞳に同じ光を宿していてホッとした。そんな見た目がつよつよのブラックが鎧を脱ぎ捨ててシャロンに戻った瞬間、庇護欲が全開になってその鎧ごと抱きしめたくなった。

透明な水の中にいるみたいに澄んだ映像で、様々な事象も感情も表面的な事は洗い流して、大事な部分だけをそっと残してくれるような美しさがあった。時間は留まらない。でもあの日生まれた気持ちはずっと身体の内側で蒼く光り、貴方に見つけられるのを待っていたのだ。
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