自分のアイデンティティを模索する少年シャロンの成長を少年期、青年期、成人期の三部構成で描くA24作品。A24といえば『ミッドナインティーズ』､『カモンカモン』は観たものの、その他は全くといっていいほど通ってきていない。正直｢お洒落でかっこいいだけ」というイメージが先行しすぎていたため､これまでは敬遠していたのだが、さすがに映画史における必読書になってきているような気もするのでこれからは積極的に摂取していきたい。
本作品も他のA24作品と同様に｢お洒落でかっこいい」のだが、物語の中の出来事を過度に説明しすぎないことで､ただ｢お洒落」なだけではなく独特な妖艶な世界観を作り上げてしまっている。序盤に登場する麻薬ディーラーのフアンはシャロンに多大な影響を与えることになるのだが、場面が切り替わった途端に呆気なく死亡していることになっている。しかし､物語の中でフアンが亡くなったことに直接言及する描写は一切ない。ただフアンとの思い出が過去形で会話されたり､葬式の小話が出てくるのみである。そういった不確定要素が様々な場面で散りばめられており､それらが映像美とも相まることで記憶にいつまでも残り続ける作品になっているのだと思う。｢ただお洒落でかっこいいだけ」は言い過ぎました。誤解でした。
