コズモ

ムーンライトのコズモのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.5
ドラッグに溺れる母親、ディーラー、ゲイ、虐め、描かれる題材は黒人映画として目新しさは全くないが、そのパーソナルな手付きは社会派的なジャンルには回収されず、黒人の造形的美しさ、黒人社会文化を素朴に写し出し、引いては孤独のなかから不器用に他者を求める本能的な欲求を際立たせている。色彩の見せ方も単純な美的感覚ではなく、テーマと親和的な繋がりを持っていて、納得がいく。慎ましくも詩的な描写を重ね、それに俳優陣が素晴らしい演技で応えることで反射的に各キャラクターの陰影も濃くなり、ドラマに深みを与えている。
アメリカ俳優の底力というか、周りを固める助演陣はもちろんだが、なにより主人公を演じる3人が素晴らしい。三者三様の得難い特徴があり、美しさとはまた違う魅力を写し出している。シーンやカメラワークは一見素朴に作っているのだが、台詞とかシーンの省略の仕方、また音楽が素晴らしいし、その入れ方、切り方などとても緻密で地味に効くことをやっている。話と無関係な会話シーンだけで泣けるというのはイーストウッド以降、あまり覚えがない。。寡黙で凄く知性を感じる。もう一度観る予定。
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