Maiko

ムーンライトのMaikoのレビュー・感想・評価

ムーンライト(2016年製作の映画)
4.1
「自分の道は自分で決めろよ。 周りに決めさせるな。」

今年のアカデミー賞では「ラ・ラ・ランド」を抑えて作品賞に輝いた本作、ようやく観に行けました☆マイアミの貧困地域で暮らす、ある一人の少年の成長を描いた作品です。

主人公の少年シャロンは、麻薬中毒の母親ポーラと2人暮らし。しかし、学校ではチビ(リトル)と呼ばれて苛められ、母親からは育児放棄されていました。そんな彼にとっての心の支えは、何かと面倒を見てくれる麻薬ディーラーのフアンとその妻テレサ、唯一の友人のケビンだけでした。そんな中、シャロンは同性のケビンを好きになりますが...

何て言えば良いんだろう...美しい映画でした。鮮やかな映像美と、繊細な音楽が際立っていました。

今作は、シャロンの少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3部構成になっています。全体的に淡々としており、セリフも少なめですが、シャロンという人物と人生が丁寧に描かれていました。社会派ドラマかと思いきや...純愛ものでした。シャロンの秘めた一途な想いに心打たれ、切なくなりました。だからこそ、想いが通じたラストが良かったです☆ブルーが際立つラストカットも印象に残っています。

もう一つ、本作のテーマは「アイデンティティ」です。本当の自分とは?自分の居場所はどこなのか?シャロンのアイデンティティの模索を通し、私自身も「自分は誰なのか」を考えさせられました。答えはすぐには出せないけれど、様々な事を経験したり、様々な人々と出会ったりすることで本当の自分が見えてくるのではないでしょうか。何より、自分の人生は自分で決めることが大切ですね☆大学時代に書いた卒論のテーマも「アイデンティティ」だったので、本作に通じるものがありました。

そして、キャスト陣の名演にも注目です!シャロン役の3人の役者たちは皆印象的でした。言葉少なめに瞳や表情での感情表現が素晴らしい!シャロンの母親役のナオミ・ハリスの鬼気迫る演技も凄かったです!中でも特に素晴らしかったのが、マハーシャラ・アリ。短い出演シーンでありながら、彼が登場する度に安心感がありました。売人でありながら、シャロンの父親的存在であるフアンの優しさが凄く伝わってきました。オスカー受賞も納得の素晴らしい名演でした。

今回のアカデミー賞では、歴史的瞬間を迎えました!LGBTを扱い、しかもスタッフ・キャスト全員が黒人の作品としては、史上初の作品賞に輝いたのですから。正直、私はLGBT映画には多少の抵抗を感じていました。しかし、本作でその抵抗感が薄まりました。むしろ、こんなに美しくて、切なくて、一途なラブストーリーには滅多に出会えないと思いました!

観る人を選ぶ作品だと思いますが、一見の価値はあります☆映画館で観ることができて本当に良かった。
Maiko

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